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芸術都市の創造-京都とフィレンツェの対話 第二部 (5)

芸術都市の創造-京都とフィレンツェの対話 第二部 (5)

第2部 京都を世界に、世界を京都に

上野の森で考えたこと 
―文学と芸術のルネサンスへ

樺山 紘一 東京大学名誉教授

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1.ダンテとロダンの「地獄の門」


(再生時間 14分13秒)

「ダンテの『神曲』は、ロダンの『地獄の門』をはじめといたしまして数多くの芸術作品に対してインスピレーションを与え続けてまいりました。ドラクロワも、ギュスターヴ・ドレも、近くは20世紀になりましても、サルバドール・ダリといった多くの芸術家たちが、このダンテの『神曲』を絵画、版画、彫刻など様々な形でもって表現し、これらがヨーロッパにおける芸術、とりわけ美術表現の最も重要なトポス、トピックになったことは疑いないところであります。
そんなことで、この作品(『地獄の門』)は、単にロダンの人間の肉体表現がいかに凝縮したものであるかということを見ると同時に、ヨーロッパ人たちがダンテに対してどのような思い、想念を寄せてきたかということを考えるための一つの重要な手がかりであることは間違いありません。」

2.受けつがれたダフニスとクロエ


(再生時間 26分37秒)

1) ロンゴス『ラプニスとクロエー』(前3世紀)
2) ミレー;「春」と「冬」(1865)、「ダフニスとクロエ」(1845)
3) シャガール;連作版画「ダフニスとクロエ」(1961)
4) ラヴェル;バレエ組曲「ダフニスとクロエ」(1912)とロシア・バレエ

「ミレーも、このように2点の『ダフニスとクロエ』を残しておりますけれども、そのほか、実は数多くの作品がこのような形で残されることになりました。言うまでもなく、様々に考えれば、若い、多分15歳に満たない少年少女が無垢の汚れない愛をお互いに育て上げていくというロマンティシズム、あるいはそれが町の中、俗っぽい世間の中ではなくて、このような自然の風景、光景の中でもって続いていくということの美しさ、そして結局はハッピーエンディングになっていくけれども、そこまでに少年少女たちの愛・恋がどのような障害を乗り越えていくか。障害を乗り越えていくのが愛というものだという教え、『ラプニスとクロエー』という作品が後世の人々に残したメッセージは、そういうところにあったのだと思われます。今現在、この小説を読みますと、いささか甘いなという感じがしないでもありませんけれども、構成としては、実によくできた喜劇でもありまして、それだけにその後の芸術家、とりわけこのような図像をつくる画家たちに対して大きなインパクトを与え続けたということはよくわかります。」

3.青木繁と日本古代神話


(再生時間 12分49秒)

1) 「黄泉比良坂(ヨミヒラサカ)」(1903)
2) 「大穴牟知命(オオナムチノミコト)」(1905)
3) 「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」(1906)
4) 「わだつみのいろこの宮」(1908)

「日本の洋画界で、このような日本古代の神話に主題しながら、しかし当時の明治あるいは大正の人々の考えているような日常風景とは異なった世界、あえて言えば異界をこのような形で描き出し得たというのは、文字どおり青木繁が時間をかけながら上野図書館で読み込んだ数多くの神話――これは多分日本古代神話だけではありません。数多くの神話を読みながら、その中からエッセンスをくみ取り、こうして造形につなげていった、こういう青木繁の習練のたまものであったに相違ありません。」

4.霊感の源としての文学の復位

「近代の画家たちは、それがヨーロッパであれ、日本であれ、いずれにせよ数多くの古典的な作品の中から文学的イマジネーションをくみ取ってまいりました。(中略)それがそれぞれのジャンル、美術や音楽や文学が別々の道を歩みながら、これらの間にはお互いの間の連携と時には融合、フュージョンがあり得るかということは、等し並みではありません。まして、それら全体を包括しながら、現代の私たちが、都市として、あるいは国として、このような広い芸術作品、芸術活動を受け取ることができるか。それはかつて例えばフィレンツェが、例えば京都が行ってきた様々な事例に学びながら、これからその方策を考えていかなければならないのだと思います。 」

コンテンツ名 ダンテフォーラム in 京都「芸術文化都市の戦略―フィレンツェの魅力・京都の魅力」/ダンテフォーラム in 京都「文学と芸術の対話」
収録日 2005年7月24日
講師 樺山紘一

会場:京都造形芸術大学・春秋座
主催:財団法人エンゼル財団・京都造形芸術大学・日本経済新聞社
収録映像:著作権者 財団法人エンゼル財団
本コンテンツでは、2005年、京都造形芸術大学で開催された2つのシンポジウムの模様を配信しています

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プロフィール

講師:樺山紘一

(東京大学名誉教授)

肩書などはコンテンツ収録時のものです

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