身近な自然観察
たくさんの家やマンションが建ち並ぶまちにも、さまざまな野鳥が生活しています。都会で暮らす野鳥の知られざる生態や、観察のポイントなどを紹介します。
身近な自然観察
たくさんの家やマンションが建ち並ぶまちにも、さまざまな野鳥が生活しています。この動画では、世田谷区玉川・瀬田周辺をフィールドワーク。都会で暮らす野鳥の知られざる生態や、観察のポイントなどを紹介します。
制作:NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク
監修:NPO法人フィールドエッグ
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まちの野鳥は、家の軒下やベランダのちょっとしたくぼみ、ビルの手すりや電線、生け垣や植え込みなどの木々の間などを利用して、エサを探したり巣を作ったり、人の生活に近いところで一緒に生活しています。
普段の通学や買い物の時に、何気なく歩いている住宅地や駅の周りで、ちょっと足を止めて空を見上げてみると、双眼鏡を使わなくてもたくさんの種類の野鳥を観察することができるのです。
今回、観察フィールドとしたのは世田谷区玉川・瀬田周辺。駅前に大きなビルが建ち並び、その周りには古くからの住宅地が広がります。しかしながら、さまざまな木々が植えられた緑道をはじめ、住宅の庭木、ビルの周りに植えられた木々など、多種多様な緑が見られるまちです。
そこに暮らす野鳥が何を食べ、どんな場所を利用して生活しているのか、その観察のポイントを解説。準備すべき点や観察のルールについてもご紹介します。
●寒さ対策・水分補給など季節毎の自己健康管理をしっかりと
野鳥観察をする時には、冬は寒さの中でつらい思いをしないように、また夏は暑さの中で熱中症にならないように水筒を持参するなど十分な自己管理を心がけてください。
●観察する前に双眼鏡のピントの調整・目の幅調整をしましょう
観察の時に欠かせない双眼鏡も倍率、重さなど自分に合ったものを選んでください。双眼鏡の倍率は、8~10倍がよいでしょう。
●巣から落ちたヒナは持ち帰らない
もしヒナが落ちていたらどうしますか? 巣が近くにあるはずなので、そこに戻せればベストです。巣が見つからない場合は猫などに襲われないように、高いところに置いてあげます。近くにいる親がちゃんとエサを運んでくるので安心なのです。
●野鳥の保護に困ったときは、市役所などに連絡しよう
巣やヒナの親が見つからず、どうしてもヒナを持ち帰らざるをえない時は、必ず市役所などに電話します。「保護する」と言えば、どうすればよいかを教えてくれることもあります。
●双眼鏡で家の中をのぞかない
●歩行者や自転車・車に十分気を付ける
●双眼鏡を自分の目にきちんと合わせよう
●鳥の鳴き声をノートに記録しよう
野鳥の鳴き声は、自分が聞こえた通りに、カタカナで記録しておきます。鳴き声には「正解」がありませんから自己流でよいのです。
メジロの鳴き声を「長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛(チョウベイ、チュウベイ、チョウチュウベイ)」としてある図鑑もあるくらいです。姿は見えなくても、記録した鳴き声で、後からどの野鳥か分かることもあるので、鳴き声の記録は重要です。
●鳥が何度も戻ってくるときは、近くに巣があるか観察してみよう
「先ほど見た鳥がまた来た」と感じたら、近くに巣がある可能性が高いです。観察者が大勢いると、鳥は気になって見にきます。何回も来るということは近くに巣がある証拠です。
●家の周りのどんな場所を使って子育てしているか、観察してみよう
まちの中で見ることができるムクドリ。穴の中で子育てをしますが、まちでは家の中や戸袋などの穴をうまく使って子育てしています。
スズメも屋根のちょっとした隙間を使って繁殖しています。
ちなみにカラスは皿型の巣で木の上に巣を作ります。
●生垣など葉っぱの茂みもよく観察してみよう
ヒヨドリも皿型の巣を作ります。葉っぱが枯れない植物の枝や、中が見えない生垣などに巣を作ったりしますので、よく見てみましょう。
【鳥の巣・豆知識】
※鳥の巣は、低い場所だと猫に狙われるおそれがあるため、高い場所に作られます。もし、学校で巣箱を付けることがあったら、人が触れる高さ・猫が来られる高さだと、鳥が入らないので気を付けてください。
●野鳥にまつわるさまざまなトピック(雑学)も知ろう
ツバメは1日に200回ぐらいエサを運びます。
また、スズメはコメを食べるというイメージがありますが、子育て中は栄養価の高い虫をエサにしています。
虫に食われた葉を発見したら、そこには虫がいるということです。ツバメやスズメはこういう虫を駆除してくれているとも言えます。
●鳥のエサになる虫が育つ環境も考えよう
虫に食われた葉は見た目が悪いので、都会では病気に強い草・虫がつかないような植物を植えがちです。そうすると虫は減りますが、それと同時に、虫をエサにしている鳥も減ってしまうのです。
●生き物の食物連鎖について考えよう
生き物は種類によってそれぞれ食べ物が違います。でも同じところにいるのは、それぞれのエサがあるからです。鳥は昆虫を食べ、昆虫は植物を食べる。これが「食物連鎖」です。
都会とはいえ、森があり庭木がある世田谷には食物連鎖の底辺となる生き物がたくさんいます。だから鳥も生きていける。さらに鳥が集まってくると、それをエサにする猛禽類、ワシ・タカ類などもやって来るのです。
●まちの中の小さな森の役割について考えよう
都会でありながら、そこにはちゃんと食物連鎖があり、多様な生き物が暮らしていけます。小さい森でも、数え切れないほどの虫が発生しています。小さくても森は野鳥にとってオアシスであり、人も気持ちがいいと感じる場所なのです。
●森やまちにすむ野鳥と水辺との関わりも観察しよう
鳥は羽をいつもきれいにしています。鳥にはお尻・背中の後ろに油が出るところがあり、その油をクチバシに付けて羽を掃除します。
また、汚れを落とすために水浴びもします。ただ、大きくて流れの速い川には入れません。ちょろちょろと流れる水辺は鳥にはとても大事な場所なのです。
●野鳥にやさしい暮らしをみんなで考えてみよう
昔は家の戸袋や瓦などに、鳥が住めるような隙間がありましたが、今の家はコンクリートできれいに隙間を埋めてしまい、なかなか隙間がありません。
鳥にとって、敵がいなくて、緑があって、巣・子育てする隙間があって…という場所ではなくなってきた現代のまち。最近では野鳥が少しずつ減ってきたという話も聞かれます。
いつまでも都会で鳥と一緒に住むことができるように、共存できるようなアイデアを考えて、自分の家でもぜひ積極的に実践してみてください。
・『フィールドガイド日本の野鳥.増補改訂新版』 (日本野鳥の会)
野鳥を見分けるバイブルとまで評され、初心者からベテラン、学者に至るまで愛用されている『フィールドガイド日本の野鳥』。2015年6月に新たな分類に準拠し、最新の知見や情報を加えた増補改訂版。
・『フィールド図鑑 日本の野鳥』(文一総合出版)
日本の鳥635種、外来種22種を美しいイラストで紹介する野鳥図鑑。雌雄や齢、羽衣の違い、特徴的な生態、飛翔図を、すべて描き下ろしによる精細なイラストで紹介。識別の参考になる鳥の行動や生態、類似種との識別ポイントを解説。羽や頭部の拡大比較など、識別ポイントをわかりやすく解説するための小カットも多数掲載。
・『日本百鳴鳥 202 映像と鳴き声で愉しむ野鳥図鑑』 (シンフォレスト)
日本の野鳥「202種」をこだわりの「音」と「映像」で丁寧にまとめあげた映像図鑑(DVD)。質・量ともに究極の野鳥作品を目指し、収録時間3時間30分を超えるHD映像。全編“鳴き声と自然音のみ”で構成。
・『日本の野鳥識別図鑑』(誠文堂新光社)
掲載種は約460種。迷鳥やめったに見ることができない種は掲載していない。見られる確率の高い種や観察される頻度の高い種はほぼ掲載し、調べやすくなっている。また、近縁種が1ページにまとめられていて、特徴が比較しやすくなっている。
・『新版 日本の野鳥』(山と渓谷社)
掲載種は約520種。環境、見られる時期、鳴声、特徴など簡潔な解説を基本にそれぞれの種に特徴的な写真をそろえて、識別ポイントを分かりやすくした写真図鑑。写真は野外で撮影したいくつかのポーズが掲載されており、生息環境がわかりやすい。
コンテンツ名 | 身近な自然観察 まちの野鳥を観察しよう! |
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公開日 | 初回公開:2018年8月14日 再公開:2020年3月31日 |
講師 | NPO法人フィールドエッグ 代表理事 岩渕 聖 |
簡易プロフィール | 講師:岩渕 聖 (NPO法人フィールドエッグ代表理事) 肩書などはコンテンツ収録時のものです |
制作:NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク |
たくさんの家やマンションが建ち並ぶまちにも、さまざまな野鳥が生活しています。都会で暮らす野鳥の知られざる生態や、観察のポイントなどを紹介します。