世界に響くやまとことばの世界 対談 源氏物語の国際化に向けて
対談 源氏物語の国際化に向けて
対談
岡野弘彦(歌人・國學院大学名誉)
渡部昇一(上智大学名誉教授)
- 『源氏物語』を国際化する視点とは
- 谷崎潤一郎の現代語訳をめぐって
- 『源氏物語』の時代の世界史的意義
- やまとことばの伝統を現代人の心に取り戻すには
1.『源氏物語』を国際化する視点とは
(再生時間 10分19秒)
・イメージをもって一気に文章化した紫式部とウェイリーの共通点
・『源氏物語』読解のむずかしさとウェイリー訳の明快さ
かの須磨は、昔こそ人のすみかなどもありけれ、今はいと里ばなれ、心すごくて、海人の家だに稀になむと聞き給へど
・ウェイリーの英訳をめぐる日本側の議論/正宗白鳥はウェイリー訳を支持
・オールド・イングリッシュとやまとことばについて
・『平家物語』は読めても『源氏物語』が読めないのはなぜか
2.谷崎潤一郎の現代語訳をめぐって
(再生時間 10分43秒)
・『源氏物語』の現代語訳に三回も取り組んだ谷崎潤一郎
いづれのおほん時にか、女御更衣あまた侍ひ給ひけるなかに、いとやむごとなききはにはあらぬが、すぐれて時めき給ふ、ありけり
・第1回目の訳
いつ頃の御代のことであつたか、女御や更衣が大勢祇候(しこう)してをられる中に、非常に高貴な家柄の出と云ふのではないが、すぐれて御寵愛を蒙つていらつやるお方があつた。
・第2回目の訳
いつの御代のことでしたか、女御や更衣が大勢祇候(しこう)してをられました中に、格別重い身分ではなくて、誰方(どなた)よりも時めいてをられる方がありました。
・第3回目の訳
何という帝の御代のことでしたか、女御や更衣が大勢伺候していました中に、たいして重い身分ではなくて、誰よりも時めいている方がありました。
・主語を補う与謝野晶子訳と主語をいれない谷崎訳
・紫式部の文章の奥深い心を読ませようとした谷崎の仕事
・アッツ島の戦いに向かう船中で『源氏物語』を読んだドナルド・キーン
・伝統を守るばかりでなく、『源氏物語』を国際化する視点が必要
3.『源氏物語』の時代の世界史的意義
(再生時間 17分36秒)
・読みやすさか、原文への忠実さか/谷崎訳をめぐって
・わかりやすいほうが売れる、現代の出版事情
・原書を離れて一人歩きするキャッチフレーズ
・ギリシャ神話と『古事記』『源氏物語』における男女の愛
・心を落として読めばすべて「風俗潰乱の書」となる
・国際化には『源氏物語』の時代や社会背景をもっと紹介する必要がある
・平安時代は文明史上でもっとも平和が長く続いた時代
・紫式部や清少納言、和泉式部など優れた女性作家を数多く輩出
・世界の文学史に先んじている平安朝の女流文学
・宗教的な力を秘めていた『源氏物語』の女性たち
・仏教、儒教の価値観に変わる以前の女性のありかたが描かれている
4.やまとことばの伝統を現代人の心に取り戻すには
(再生時間 16分45秒)
・ウェイリーと谷崎/翻訳にかける情熱
・軍記物語とは次元が異なる『源氏物語』の文章
・やまとことばのボキャブラリーがなければ読めない『源氏物語』
・オールド・イングリッシュの代表作『ベーオウルフ』との類似
・母国語だけの文章と外来語を入れた文章の違い
・耳から心へ受け継がれるやまとことばの伝統的性格
・漢語を用いた和歌は耳から心へ伝わりにくい
・和歌、俳句と外来語
古池や蛙飛び込む水の音 (芭蕉)
枯朶(かれえだ)に烏のとまりけり秋の暮れ (芭蕉)
最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも (斉藤茂吉)
・百人一首ぐらいは子供にきちんと教えてほしい
筑波嶺のみねより落つるみなの川こひぞつもりて淵となりぬる (陽成院)
・日本文化の継承に立ち向かうべき現代社会
・現代日本人が活力を取り戻すにはどうすべきか
・深い恋の心を持つことがなくなった現代
・恋歌の理想を内的な体験として持つことが、現実をより素晴らしいものにする
コンテンツ名 | 「Genjiフォーラム・スペシャル 『源氏物語』と根生いの心 ~世界に響くやまとことばの世界~」 |
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収録日 | 2003年6月7日 |
講師 | 岡野弘彦、渡部昇一 |
簡易プロフィール | 講師:岡野弘彦(歌人・國學院大學名誉教授) 講師:渡部昇一(上智大学名誉教授) 肩書などはコンテンツ収録時のものです |
会場:東京・日本財団ビル大会議室 |
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