DATA | |
学校 | 聖徳学園高等学校 |
実施年月日 | 2024年1月~2月 |
担当教員 | 校長補佐・データサイエンス部長 ドゥラゴ英理花 |
ゲスト講師 | 東京⼤学⼤学院教育学研究科・教授 北村友⼈ |
テーマ | 「地域探究×データサイエンス」 |
※学年や肩書などはコンテンツ収録時のものです。
東京都武蔵野市にある聖徳学園は、「グローバル教育」と「STEAM教育」を軸に、「国際舞台で活躍できる人材の育成」に取り組む中高一貫校です。近年はICT教育にも力を入れており、2021年には、Apple社が「学習・指導・学校環境の継続的なイノベーションの推進校」として認定する「Apple Distinguished School」に選ばれました。
そして2024年4月からは、高校課程で「データサイエンスコース」を新設。「VUCA(ブーカ)時代」のいま、前例のない課題に直面した場合でも、「データを正しく活用して、答えを導き出す探究力」を養います。
そんな同校では、「データサイエンスコース」の新設に先駆けて、高校1年生の「情報I」の授業で、データサイエンスの基礎を学びながら地域探究を行いました。今回は、そのプログラムの様子をレポートします。
そもそも「探究的な学習」をどのように捉えているのか、またなぜデータサイエンスと掛け合わせるのか、授業を通して狙いなど幅広いテーマで語っている対談を映像にまとめています。
今回のプログラム
初回の授業では、「情報I」科目の教科書を用いながら、データの取り扱いや分析、可視化などといった、データ収集及び分析の基礎を学びました。世の中に溢れている膨大なデータを「的確に」処理し、「適切に」扱う力がデータサインエンスには求められます。その土台づくりとなる授業です。
初回授業の後半から第2回授業にかけては、地域経済分析システム「RESAS」(リーサス)の基本的な使い方を学習。「RESAS」は、内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)および経済産業省が、産業構造や人口動態、人の流れなどに関する官民のビッグデータを集約し、可視化しているシステムです。
この「RESAS」のデータを用いることで、「武蔵野市の社会課題を客観的に考察できる」という示唆を与えて、第2回の授業は終了。担当するドゥラゴ英理花先生は、「2年次にはグローバルなテーマを扱う予定です。
まず1年次には、学校が所在する身近な地域を扱うことで、生徒に“自分ゴト”として社会課題に向き合ってもらいたいという思いがあります」と今回のテーマ設定の意図を説明してくれました。
第2回に続き、「RESAS」を活用して「年齢別の人口推移」など、武蔵野市の多様なデータを収集していきます。また、他地域のデータと比較すれば、武蔵野市の抱える課題がより鮮明になることを生徒たちは体験しました。「データサイエンスは、自分なりに設定した課題に対して、データを用いて新たな価値を生み出すアプロ―チと手法です。
授業では単にデータ収集するだけではなく、科学的根拠から合理的な判断をする力を伸ばすことを目標にしています」(ドゥラゴ先生)
生徒たちが論理的に思考できるよう、ドゥラゴ先生は自作のワークシートを活用。「データと事実との相関関係を見抜くことの大切さ」を示して授業は終了しました。
前回の授業で使用したワークシートをベースに、武蔵野市が抱える「人口問題」の解決策を生徒一人ひとりが考察。それぞれの解決策を1枚のポスターにまとめました。 社会課題の解決においては、何かひとつの正解が用意されているわけではありません。
自ら“問い”を立て、論理的な解決策を考えて、アウトプットする。 そして、そのアウトプットを他者と共有し、意見を交わすことで新たな課題が見つかり、より解決策がブラッシュアップされていく。このような統計的探究プロセスを「PPDACサイクル」といい、この「PPDACサイクル」を生徒に体験してもらうことも今回のプログラムの狙いです。
第5回授業では、ポスターをブラッシュアップしつつ、発表資料を作成しました。そして、最終の第6回授業では、3人1組でグループセッションを実施。タブレットでポスターを見せながら、自分の考えた「武蔵野市の人口問題解決策」をメンバー2人に発表しました。
若年層の急激な人口減少が続くという予測データから「武蔵野市をもっと若者が集まる街にするために、若者の意見を市政に届ける仕組みをつくるべき」(丸岡亜紗実さん)。人口が吉祥寺周辺に一極集中しており、かつ鉄道が敷設されていないエリアが多いというデータから、「南北に延伸する新たな鉄道路線をつくってはどうか」(桐原出帆さん)。大人もハッとするようなユニークな意見がたくさん披露されました。
そして、最後に互いの発表を評価フォームで採点し合いました。社会課題解決には多くの視点が必要となりますから、お互いの考えを知ることができる作業である「評価」もPPDACサイクルをまわすうえで大事なプロセスです。全6回の授業を終えて、ドゥラゴ先生はこう感想を述べます。
現代のデータ駆動社会において、データサイエンスを中心とした探求にしたいと思っていました。「データサイエンス」と「探究的な学習」は別々のようですが、親和性が高いと感じています。
高等学校で行うデータサイエンスではただ数値を扱う、データを分析するだけでなく、データに基づいた根拠と合理的な意思決定、課題解決方法を導き出すプロセスを学ぶことにも寄与します。そのためには、まず課題の設定が重要になります。次にデータを収集し扱っていく、つまり「PPDAサイクル」がとても重要になってきます。
今回授業では学校のある武蔵野市の人口問題という課題を設定しましたがそれにより生徒自身が興味関心を持ちやすい、つまり自分ゴトしやすいテーマで「 PPDACサイクル」に沿って解決策を思案することができたかと思います。
今回の経験は今後学年が上がり、また大学に進学した際にもデータを使い合理的に物事を考えられる訓練にもなるかと思っています。
コンテンツ名 |
地域探究×データサイエンス 聖徳学園高等学校 |
取材日 | 2024年1月~3月 |
取材 | 相澤良晃 |
監修 |
東京大学大学院教育学研究科・教授 北村友⼈ |