スポーツの魅力と社会とのつながり
スポーツの魅力と社会とのつながりについて、筑波大学山口香教授にお話をうかがいました。
目次
1)はじめに
再生時間 約3分間
- 2024年にパリでオリンピック・パラリンピックが開催される。
- 森永エンゼル財団はスポーツについて考える契機として、スポーツ界で活躍する方々へのインタビュー企画を立ち上げた。
- 今回のゲストは筑波大学教授の山口香さん。
- 山口さんは全日本選手権10連覇、世界選手権金メダル、オリンピック銅メダルの柔道選手であり、引退後もスポーツと社会をつなげる活動を行ってきた。
- 対談の目的は、スポーツの魅力と社会とのつながりについて多くの人に感じてもらうことである。
2)コーチング
再生時間 約9分間
- みんな選手のためにと思って行動しているが、選手のためになっているかは疑問が残る。
- 指導者として選手のやる気を引き出すためには、プレッシャーではなく適切な言葉掛けが必要。
- 山口さんは「意志あれば道あり」という信念を持ち、指導者は選手に考えさせることが重要と述べている。
- 試合中の選手は自分で問題を見つけ、解決策を考える訓練が必要で、指導者はそのプロセスをサポートするべき。
- 教育や研究と同様に、リフレクション(省察)と自問自答が重要で、問いを立てることが学びや成長に繋がる。
3)アスリートの発信力、意思疎通
再生時間 約10分間
- 最近のトップアスリートは、日本人としての良さを持ちながら、個人のアスリートとして自然体で活躍していると感じる。
- 世界が舞台であることが、スポーツの良い面であり、アスリートとして社会に影響を与えている。
- トップアスリートは社会にインパクトを与える存在であり、彼らの行動や発信が子どもたちや社会に影響を与える。
- 日本ではスポーツと政治を一緒に語ることが少ないが、アスリートは政治的な意識が高まり、社会への発信力がある。
- 海外のスポーツチームでは選手が自分の意見を持ち、意思疎通することが求められ、発信しない選手はチームで生き残れない。
- スポーツや人間関係において、自分の意見を言い合うことが互いの成長につながるが、日本人はそれを怖がる傾向がある。
- 自分で考え、行動し、考えていることを伝え合うことが大事。
- スポーツにおいて、仕掛けてみないと自分の技が評価できない。
- 監督時代、何もしない試合を嫌い、仕掛けてみることの重要性を選手に伝えていた。
4)コンプライアンス意識
再生時間 約6分間
- パワハラやアカハラなどコンプライアンス意識が高まる一方で、お互いに言いたいことが言えない状況も生じているのではないか。
- スポーツに例えると、ラリーをするように意見を交換することが重要。いきなりスマッシュを打つのではなく、まずラリーを楽しむことが大切。
- 勝ち負けだけでなく、お互いを高め合うステップとしてラリーを通じたコミュニケーションが重要。
- 選手同士や選手と指導者の関係でもラリーのようなコミュニケーションが必要。選手のやる気や反応を理解するためのラリーが重要。
- 指導者は自分の言っていることが選手に伝わっているかを確認することが必要。試合後に冷静になるためにミーティングをしないなど、反省して改善してきた。
- 怒ったり繰り返し同じことを言うのではなく、お互い冷静に考えてから話し合うことが重要。
5)上に立つ者、勝った者の責任
再生時間 約11分間
- 選手を選ぶときには選択の理由を明確にし、チーム全体に納得させることが指導者の役割。
- 普段の指導や声掛けが一貫している場合、どちらを選んでもチームが納得する。
- 「自分の言っていることが全て正しい」とする指導者は信頼関係を築けない。
- 指導者が普段から発しているメッセージを選手たちが共通理解し、最後の場面まで貫くことが重要。
- 一貫性を欠くと信頼を失う。
- 努力が必ず報われるわけではない。スタート地点や環境が異なるため、努力だけでは結果は出ない。
- 勝者はその立場に責任を持ち、正しいと思うことを言うべき。
- メディアや社会は結果を出した人間の話を聞く傾向があるため、その立場を利用して正しいメッセージを発信する必要がある。
- 成功者が社会貢献を通じて社会の構造を理解し、そのメッセージを広めることが重要。
- スポーツもその一環として社会に貢献するべき。
6)全員参加
再生時間 約10分間
- スポーツは順位が明確で、勝ち負けに追われやすい。企業も売り上げなどで同様に追い立てられることがある。
- 柔道界では小学生の全国大会をやめたり、リーグ戦でカテゴリーを作るなどの改革が行われている。
- 日本は「日本一」「世界一」に価値を見出しすぎている。トップレベルではそれが重要だが、常に勝つことが求められる。
- 本来はトライ・アンド・エラーが重要で、失敗しても再挑戦できる環境が必要。
- パブリック・スクールのように、多くのディビジョンで試合を行い、各自がプレーヤーとして戦うことが重要。
- 社会の中で各自がプレーヤーとして役割を果たすことが重要。
- すべての人がプレーヤーになる社会が理想。分析やアナリスト的な役割もプレーヤーとして重要。
7)緊張と楽しむ
再生時間 約8分間
- 緊張感が高まることを受け入れると、勝負事も楽しめるようになると考えている。
- 自然体で挑むことが大切で、背伸びをせず、自分の力を発揮することを重視。
- 緊張しないと良いパフォーマンスは出せないため、緊張を受け入れることが重要。
- 勝つことには意外性があるが、負けることには意外性がない。
- 最近の選手が「楽しみたい」と言うことの意味について。
- 「楽しむ」とは、苦しみと喜びが共存する状態であり、究極的な境地に達すること。
- 日本語の「楽しむ」とは少し違い、プレジャー(喜び)やマイプレジャー(自己の喜び)という意味合いが強い。
- 勉強や仕事でも同じように、チャレンジングな状況での達成感が喜びや楽しさに繋がると感じている。
- 指導者や親、上司は、選手や部下がプレジャーを追求しすぎて自己を壊す危険性をコントロールすることが重要。
8)社会に対して果たす意義と価値
再生時間 約8分間
- スポーツが時代を経ても愛され続ける理由は、その中に社会や人生の縮図がある。
- スポーツのチームワークや役割分担は、理想的な社会の姿を反映している。
- ラグビーの日本代表チームには、日本国籍を持たない選手もいるが、彼らは日本のジャージを着て戦っている。この姿は、多様性と共生の重要性を示している。
- スポーツでは共通のルールがあるため、公正な競争が可能。
- 先進国と途上国が対等に競い合うことができ、逆転のチャンスも生まれる。
- このような平等な競争の場が、現実社会にも適用されれば、より良い社会が実現できるかもしれない。
- スポーツはジェンダー問題や障害者と健常者の共生など、さまざまな社会問題を含んでいる。
- スポーツを通じて、これらの問題に対する理解を深め、解決の糸口を見つけることができる。
- オリンピックは、世界が目指すべき理想の社会を象徴するイベント。
- 単なる競技大会ではなく、より良い社会の実現に向けたムーブメントである。
9)結びに
再生時間 約10分間
- スポーツは平和の象徴であり、戦争や紛争がない状態で初めて成立するもの。
- スポーツイベント中は、アスリートたちが一堂に会してルールに従って競い合うため、その瞬間は平和が保たれている。
- オリンピックは、国際社会が集まり、平和と協力を象徴する大会。
- オリンピックの歴史を振り返ると、政治的な対立や戦争にもかかわらず、継続して開催されてきた。
- 現実には紛争が続き、完全な平和は達成されていないが、それでも理想を掲げ続けることで社会を良くしていく希望を持つことが大切。
- スポーツでは共通のルールに基づいて競技が行われるため、異なる背景を持つ人々が公平に競い合える。
- これが現実社会でも重要であり、共通の倫理観や価値観を持つことで社会が成り立つ。
- スポーツは人々に感動や勇気を与え、人間の可能性を示す。
- スポーツを通じて社会の理想や価値観を子どもたちに伝えることが重要。
- スポーツは教育の一環として、社会の理想を示し続けるべき。
- スポーツを通じて子どもたちに理想を伝え、社会を良くするためのメッセージを広めていくことが必要。
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