エンゼル音楽ラボ 「クラシックを学ぶ実験室!?」【講師:スギテツ】
第4回:作曲につながる「変奏」を体験しよう!
「変奏曲」は現代で言うとカバー曲?
今回は、最終的な目標でもある「作曲をするためのヒント」をお伝えしていきたいと思います。
これまでの歴史をかえりみても、音楽の進化には「模倣」がつきものです。ビートルズの影響を受けたアーティストがたくさんいるように、古きクラシックの時代にも、先人の作った楽曲にインスパイアされて、そのメロディの形を変えて別の作品にするという手法は当たり前のようにありました。
例えば、1858年にジャック・オッフェンバックという人が作曲した、『地獄のオルフェ』(天国と地獄)という曲があります。
ジャック・オッフェンバック『地獄のオルフェ』(天国と地獄)
そうです。運動会の徒競走やカステラのCMなどでおなじみの曲ですね。
この曲に対して、1886年にフランスの作曲家、カミーユ・サン=サーンスが『動物の謝肉祭』という組曲の中で、こんなアレンジを仕掛けています。
カミーユ・サン=サーンス『動物の謝肉祭』第4曲「亀」
もともとアップテンポだった曲が、亀の動きのイメージに合わせてかなりゆっくり演奏されています。曲の速さだけでもこんなに印象が変わるというのが面白いですね!
もう1曲、今度はテンポ以外にも音の並びや拍子なども変化させるなど、凝った仕掛けが満載のユニークな作品を紹介しましょう。
モーツァルト『きらきら星変奏曲』
この曲の原曲は『ああ、お母様、あなたに申しましょう』という当時パリで流行っていた歌。それを基に1778年にモーツァルトが作曲したピアノ曲です。聴き馴染みのある曲がコロコロと変わってゆく楽しい曲ですね。
このように、主題をもとにして、その旋律のかたちを変えながら繰り返す形式を「変奏曲」と言います。
バロック時代から近現代に至るまで、クラシック音楽には数多くの変奏曲が存在し、旋律的変奏(主題と同じ和音進行)、和声的変奏、リズム的変奏、テンポ上の変奏、対位法的変奏など、さまざまな技法が用いられています。
今回は、実際に「変奏」にトライをしてみようということで、再び岩倉高校の吹奏楽部の皆さんにご協力をいただきました。それぞれの感性に委ねた「変奏」の実践編をお楽しみ下さい。
試行錯誤が続いているけど、ただ楽譜通りに演奏するだけではない「自由さ」を、少しずつ掴んでいけそうですね。
では最後に、生徒の皆さんが挑戦してきた即興による「変奏」の要素を盛り込みながら、全員でこの曲を演奏してみましょう。
「変奏」は作曲の足掛かり?
今回のテーマ「変奏曲」いかがだったでしょうか?
「第九」の旋律で即興的な変奏にトライをしてもらいましたが、実はベートーヴェンは若き頃、貴族の館などでその場で流行歌などを即興的にピアノで変奏して聞かせ、収入を得ていたそうです。まるで酒場のジャズピアニストのようですが、その経験がやがて、数多の名曲を生み出すノウハウにつながっていたかもしれませんね。
音楽の創造、つまり「作曲」の足掛かりとして、変奏はその第一歩となるでしょう。
皆さんも、それぞれ好きな曲のメロディを自由に変奏してみてはいかがでしょうか?
コンテンツ名 | エンゼル音楽ラボ 「クラシックを学ぶ実験室!?」【講師:スギテツ】 第4回:作曲につながる「変奏」を体験しよう! |
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収録日 | 2021年6月6日 |
講師 | スギテツ(杉浦哲郎、岡田鉄平) |
協力:岩倉高等学校吹奏楽部 |
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