「源氏物語巻名歌」から「源氏物語巻名歌」から

歌を手がかりに源氏物語を理解するために

『源氏物語』は五十四帖(巻)で構成され、それぞれに巻名(タイトル)が付いています。巻名の多くは、その巻で詠まれた歌にある言葉に由来しています。このコンテンツでは、巻名の元となった歌を中心に、「源氏物語全講会」で行った岡野弘彦先生の講義(「桐壺」~「雲隠」)をご覧いただけます。

源氏物語全講会

  • 帚木(ははきぎ)

    「帚木の心を知らで園原の道にあやなく惑ひぬるかな」光源氏

    「数ならぬ伏屋に生ふる名の憂さにあるにもあらず消ゆる帚木」空蝉


  • 空蝉(うつせみ)

    「空蝉の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな」光源氏

    「空蝉の羽に置く露の木隠れて忍び忍びに濡るる袖かな」空蝉


  • 夕顔(ゆうがお)

    「心あてにそれかとぞ見る白鷺の光そへたる夕顔の花」夕顔

    「寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔」光源氏


  • 若紫(わかむらさき)

    「手につみていつしかも見む紫のねに通ひける野辺の若草」光源氏


  • 末摘花(すゑつむはな)

    「なつかしき色ともなしに何にこのすゑつむ花を袖に触れけむ」光源氏


  • 葵(あおい)

    「はかなしや人のかざせる葵ゆゑ神の許しの今日を待ちける」源典侍

    「かざしける心ぞあだにおもほゆる八十氏人になべて逢ふ日を」光源氏


  • 賢木(さかき)

    「神垣はしるしの杉もなきものをいかにまがへて折れる榊ぞ」六条御息所

    「少女子があたりと思へば榊葉の香をなつかしみとめてこそ折れ」光源氏


  • 花散里(はなちるさと)

    「橘の香をなつかしみほととぎす花散る里をたづねてぞとふ」光源氏


  • 澪標(みをつくし)

    「みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐり逢ひけるえには深しな」光源氏

    「数ならで難波のこともかひなきになどみをつくし思ひそめけむ」明石君


  • 松風(まつかぜ)

    「身を変へて一人帰れる山里に聞きしに似たる松風ぞ吹く」明石の尼君


  • 薄雲(うすぐも)

    「入り日さす峰にたなびく薄雲はもの思ふ袖に色やまがへる」光源氏


  • 朝顔(あさがほ)

    「見し折のつゆ忘られぬ朝顔の花の盛りは過ぎやしぬらむ」光源氏

    「秋果てて霧の籬にむすぼほれあるかなきかに移る朝顔」朝顔


  • 乙女(をとめ)

    「少女子も神さびぬらし天つ袖古き世の友よはひ経ぬれば」光源氏

    「かけて言へば今日のこととぞ思ほゆる日蔭の霜の袖にとけしも」五節

    「日影にもしるかりけめや少女子が天の羽袖にかけし心は」夕霧


  • 玉鬘(たまかづら)

    「恋ひわたる身はそれなれど玉かづらいかなる筋を尋ね来つらむ」光源氏


  • 初音(はつね)

    「年月を松にひかれて経る人に今日鴬の初音聞かせよ」明石の御方

    「ひき別れ年は経れども鶯の巣立ちし松の根を忘れめや」明石の姫君


  • 胡蝶(こてふ)

    「花園の胡蝶をさへや下草に秋待つ虫はうとく見るらむ」紫の上

    「胡蝶にも誘はれなまし心ありて八重山吹を隔てざりせば」秋好中宮


  • 蛍(ほたる)

    「鳴く声も聞こえぬ虫の思ひだに人の消つには消ゆるものかは」兵部卿宮

    「声はせで身をのみ焦がす蛍こそ言ふよりまさる思ひなるらめ」玉鬘


  • 常夏(とこなつ)

    「撫子のとこなつかしき色を見ばもとの垣根を人や尋ねむ」光源氏

    「山賤の垣ほに生ひし撫子のもとの根ざしを誰れか尋ねむ」玉鬘


  • 篝火(かがりび)

    「篝火にたちそふ恋の煙こそ世には絶えせぬ炎なりけれ」光源氏

    「行方なき空に消ちてよ篝火のたよりにたぐふ煙とならば」玉鬘


  • 行幸(みゆき)

    「うちきらし朝ぐもりせし行幸にはさやかに空の光やは見し」玉鬘

    「あかねさす光は空に曇らぬをなどて行幸に目をきらしけむ」光源氏


  • 藤袴(ふぢばかま)

    「同じ野の露にやつるる藤袴あはれはかけよかことばかりも」夕霧

    「尋ぬるにはるけき野辺の露ならば薄紫やかことならまし」玉鬘


  • 真木柱(まきばしら)

    「今はとて宿かれぬとも馴れ来つる真木の柱はわれを忘るな」姫君(真木柱)

    「馴れきとは思ひ出づとも何により立ちとまるべき真木の柱ぞ」(北方)


  • 藤裏葉(ふぢのうらば)

    「春日さす藤の裏葉のうらとけて君し思はば我も頼まむ」内大臣


  • 若菜(わかな)

    「小松原末の齢に引かれてや野辺の若菜も年を摘むべき」光源氏


  • 柏木(かしはぎ)

    「ことならば馴らしの枝にならさなむ葉守の神の許しありきと」夕霧

    「柏木に葉守の神はまさずとも人ならすべき宿の梢か」落葉宮


  • 横笛(よこぶえ)

    「露しげきむぐらの宿にいにしへの秋に変はらぬ虫の声かな」一条御息所

    「横笛の調べはことに変はらぬをむなしくなりし音こそ尽きせね」夕霧


  • 鈴虫(すずむし)

    「おほかたの秋をば憂しと知りにしをふり捨てがたき鈴虫の声」女三宮

    「心もて草の宿りを厭へどもなほ鈴虫の声ぞふりせぬ」光源氏


  • 夕霧(ゆふぎり)

    「山里のあはれを添ふる夕霧に立ち出でむ空もなき心地して」夕霧

    「山賤の籬をこめて立つ霧も心そらなる人はとどめず」女二宮


  • 御法(みのり)

    「絶えぬべき御法ながらぞ頼まるる世々にと結ぶ中の契りを」紫の上

    「結びおく契りは絶えじおほかたの残りすくなき御法なりとも」花散里


  • 幻(まぼろし)

    「大空をかよふ幻夢にだに見えこぬ魂の行方たづねよ」光源氏

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