京都とフィレンツェの対話 第二部 神話から物語へ貫いて流れているもの―古代母権社会の面影をたどって(岡野弘彦)

京都とフィレンツェの対話 第二部 神話から物語へ貫いて流れているもの―古代母権社会の面影をたどって(岡野弘彦)

第2部 京都を世界に、世界を京都に

神話から物語へ貫いて流れているもの 
―古代母権社会の面影をたどって

岡野 弘彦 國學院栃木短期大学学長・國學院大學名誉教授

okano

(1).『古事記』(神話世界)


(再生時間 32分31秒)

1.大和―天照大神
高天原にとどまる、天孫ににぎの尊の祖母(みおや)神。
「おほひるめむち」は、日の妻としての尊稱。
また「わかひるめむち」あり。

2.出雲
―みおや神―母(おも)の乳汁をもって、大国主を復活させる。
―すせり姫―蛇の領布(ひれ)・百足のひれの力で、大国主を援助。
―呪文「内は洞々(ほらほら)、外は統(す)ぷ統ぷ」
室祝ぎの寿詞(よごと)にして、女性の精妙をたたえる呪言。

3.倭建神話
やまとたけるを助ける女性
―倭姫 ―やまとたけるのおば、伊勢の斎宮
―乙橘姫 ―走水で海に入る
―みやず宮

「・・・さ寝むとは われは思へど、汝が着せる 襲の裾に 月立ちにけり」
やまとたける

「・・・あらたまの 年が来経れば あらたまの 月は来経ゆく うべなうべな 君待ちがたに わが著せる 襲の裾に月立ちにけり」
みやず姫

(2).『万葉集』(女性の祭祀権)


(再生時間 5分56秒)

1.倭大后(天智天皇の大后)

(147)天の原ふりさけ見れば 大君のみ寿 (いのち) は長く 天足らしたり

2.大伴坂上郎女

(380)木綿畳手にとり持ちてかくだにもわれは恋ひなむ君に逢はぬかも
(3930)道の中国つみ神は旅行きもし知らぬ君を恵みたまはな

3.東歌―新嘗の夜の主婦

(3460)誰れぞこの屋の戸おそふる新嘗にわが夫をやりて斎ふこの戸を
(3386)にほ鳥の葛飾早稲を饗(にへ)すとも
その愛(かな)しきを外に立てめやも

(3).『源氏物語』


(再生時間 7分7秒)

光源氏が永く心ひかれる女性は、母系あるいは宗教力を持つ女性。

桐壺更衣―藤壺―紫上
六条御息所
朝顔齋院
朧月夜尚侍

「『源氏物語』という物語は、『古事記』や『日本書紀』の神話とは何の関係もない平安朝のもっとあでやかな、華やかな物語のようですけれども、実は日本人の心の中に流れ続けている神話の力、殊に女性の持っていた非常に大事な神に近い役割、やがて男性の社会になって、それはだんだん遠ざけられていくわけですけれども、やがては聖と俗が逆転してしまって、むしろその特質が穢れというふうな形でマイナスの形で考えられていく女性の持っている特質というものが、『源氏物語』を読んでいますと、その奥の方に脈々と流れている感じがいたします。」

(4).戦後の折口信夫が説いた三つ


(再生時間 6分37秒)

1.出雲系の神の愛とかなしみ
2.色ごのみの道徳―八上姫・すせり姫・ぬなかわ姫(女性の選択)
3.女歌の興隆―女性の時代、女性の文学の力への期待

「折口は、本来の日本人の色ごのみというのは、漢語の好色という感じとは全然違うのだと。古代に、いろせ、いろも、いろね、いろと、という言葉があります。これは同房のきょうだいを言う言葉だと大体規定されていますけれども、同房のきょうだいというよりももっと広い、もっと自分にとって大事な異性を言うのが「いろ~」。男性にとっては「いろいも」「いろも」。すばらしい女性、理想的な女性が、「いろも」「いろいも」、あるいは「いろね」であります。女性にとっては「いろせ」「いろと」。そういう理想的な異性を「好む」という、「好む」という大和ことばの第一義は、たくさんのものの中から一番心にかなうものを選んで、それを深く愛する、大事にするということであります。」

コンテンツ名 ダンテフォーラム in 京都「芸術文化都市の戦略―フィレンツェの魅力・京都の魅力」/ダンテフォーラム in 京都「文学と芸術の対話」
収録日 2005年7月24日
講師 岡野弘彦
簡易プロフィール

講師:岡野弘彦

(國學院栃木短期大学学長・國學院大學名誉教授)

肩書などはコンテンツ収録時のものです

会場:京都造形芸術大学・春秋座
主催:財団法人エンゼル財団・京都造形芸術大学・日本経済新聞社
収録映像:著作権者 財団法人エンゼル財団
本コンテンツでは、2005年、京都造形芸術大学で開催された2つのシンポジウムの模様を配信しています

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