世界遺産モデル・フィレンツェに学ぶ 第2部 芸術からの視点
第2部 芸術からの視点
講演
田中英道 東北大学名誉教授
芸術都市の創造―芸術からの視点―(1)
(音声のみの配信)
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「ルネサンスというと、明るく、アポロみたいなものだと思わない方がいいので、ルネサンスというのはまさに暗い、陰鬱な、そしてきょうも老人の方が多いですけれども、老人なんです。老人が大事だということを言っているのがルネサンスだということは大事なことでして、老人はもっと威張っていいわけです。老人こそがルネサンスの一番創造的な人なんです。」(田中)
図版資料
1. ラファエロ <パルナッソ>(ローマ、バチカン博物館)
2. ミケランジェロ <ダビデ>(フィレンツェ、アカデミア美術館)
3. ミケランジェロ <ダビデ(部分)>(フィレンツェ、アカデミア美術館)
4. ミケランジェロ <ロレンツォ>(フィレンツェ、メディチ家礼拝堂)
5. ミケランジェロ <ジュリアーノ>(フィレンツェ、メディチ家礼拝堂)
6. ミケランジェロ <囚われ人像|朝>(フィレンツェ、アカデミア美術館)
芸術都市の創造―芸術からの視点―(2)
(音声のみの配信)
「やはり芸術都市には必ず芸術家がいるわけで、フィレンツェにはミケランジェロがおり、ラファエロがおり、レオナルドがおり、もちろんドナテルロがおりというようなことで、たくさんいるわけですが、奈良や京都に芸術家の名前が出てこない。」
図版資料
7. 公麻呂 <広目天>(東大寺戒壇院)
8. 公麻呂 <広目天(部分)>(東大寺戒壇院)
9. 公麻呂 <増長天>(東大寺戒壇院)
10. 公麻呂 <日光菩薩像>(東大寺三月堂)
11. 公麻呂 <月光菩薩像>(東大寺三月堂)
芸術都市の創造―芸術からの視点―(3)
(音声のみの配信)
「運慶のすばらしい人間観察力、そして老人の姿が美しい。人生をずっと見尽くしてきた老人の、まだ何かを持って生きていくという、そういう姿が運慶の非常に優れた表現力として出ているわけで、これこそが全く芸術でなくて何だろう。つまり芸術であると同時に宗教の像である。宗教であると同時に芸術である。両方の見方をする。つまりこの像がそう言っているわけです。
我々が(京都や奈良を)芸術都市というと、宗教の方が反発するんです。しかし、宗教と芸術というのは決して対立するものではない。両方の融合があって初めて芸術が生き、そして宗教が生きていくという、そういうのがギリシアであり、ルネサンスであり、そして天平や鎌倉の時代であるわけです」(田中)
図版資料
12. 将軍万福 <阿修羅像>(興福寺)
13. 将軍万福 <須菩提像>(興福寺)
14. 公麻呂 <十二神将|メキラ像>(新薬師寺)
15. 運慶 <無著>(興福寺)
参考文献: 田中英道著 『天平のミケランジェロ 公麻呂と芸術都市・奈良』(弓立社)
トークイン「芸術からの視点」
樺山紘一 印刷博物館館長
田中英道 東北大学名誉教授
松田義幸 尚美学園大学学長
・イタリア旅行におすすめの本
樺山紘一 『ルネサンス』 講談社学術文庫
田中英道 『レオナルド・ダ・ヴィンチ』 講談社学術文庫
田中英道 『ミケランジェロ』 講談社学術文庫
・アリストテレスの哲学と中世の神学
・12世紀の哲学者アヴェロエス(イブンルシュド)
・ユダヤ教の哲学者マイモニデス
・トマス・アクィナスの神学に受け継がれた中世のアリストテレス研究
「この人(アヴェロエス=イブンルシュド)の仕事の一番大きなポイントは、古代ギリシアのアリストテレスの哲学を読み継ぎながら、これをイスラム教の神学につなげていったということ。これは別にイブンルシュドが始めたわけではないんですけれども、それをとことんまで押し進めたことで、イスラム教の神学を古代ギリシア以来哲学的に説明できる見通しがついたということです。」(樺山)
批評家が芸術都市をささえる
「田中さんのお話の中で、私たちにとって一番大きなメッセージは一番最後のところのお話だと思います。芸術都市が出来上がるためには、そこに批評もしくは批評家がいなければいけないということ。あるいはルネサンスを支える市民であれ、公民であれ、国民であれ、その人間が批評の精神をどうやってつくり上げていくかということにかかっている。私も全くそのとおりだと思います」(樺山)
コンテンツ名 | ダンテフォーラム2009 「芸術都市の創造(2) 世界遺産モデル・フィレンツェに学ぶ」 |
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収録日 | 2009年11月15日 |
講師 | 樺山紘一、田中英道、松田義幸 |
簡易プロフィール | 講師:樺山紘一(印刷博物館館長) 講師:田中英道(東北大学名誉教授) 講師:松田義幸(尚美学園大学学長) 肩書などはコンテンツ収録時のものです |
会場:イタリア文化会館 |
さまざまな分野に精通し、経験、知識豊富な講師の方々をご紹介します。