人生の危機に、精神の力を シンポジウム 永遠の世界の『神曲』
シンポジウム 永遠の世界の『神曲』
今道友信(英知大学教授・東京大学名誉教授)
稲垣良典(長崎純心大学教授・九州大学名誉教授)
樺山紘一(国立西洋美術館長・東京大学名誉教授)
(五十音順)
- 稲垣による補足
- 樺山による補足
- 今道による補足
- 古典とはなにか
- 質疑応答
- 会場からの質問とまとめ
1.稲垣による補足
(再生時間 4分42秒)
- 「『神曲』講義」の経緯について
- 「わたしの秘密はわたしだけのものに」(旧約聖書・イザヤ書)
2.樺山による補足
(再生時間 16分24秒)
- 「『神曲』は天国篇が主体的実体」に感服
i. 地 4720行 煉 4755行 天 4758行
ⅱ. 根拠 主体 火 星 空間 徳
地獄 古典神話 感覚 焼 なし 閉鎖 絶望(愛)
煉獄 教会伝承 想像 浄 遠望する 水平的・開放 望愛
天国 科学と神学 理性 照 星の中 解放 信望愛
- 歴史家の立場からみた「煉獄篇」/時代の証人としての『神曲』
絵にてはチマーブエ、覇を保たんとおもへるに、
今はジオットの呼声高く、
彼の美名(よきな)微(かすか)になりぬ。
(山川丙三郎訳 岩波文庫『神曲』(中)浄火 77頁)
善き世を造れるローマには、
世と神との二つの路をともに照らせし二の日あるを常とせり
一は他の一を消しぬ、剣は杖と結ばれぬ、
かくして二を一にすとも豈宜(よろ)しきをうべけんや
(山川丙三郎訳 岩波文庫『神曲』(中)浄火 108頁)
さらば汝ほどなく日を見ることをうべきに、フラー・ドルチンに告げて、
彼もしいそぎ我を追いてこゝに来るをねがはずば
雪の囲みが、たやすく得べきにあらざる勝利を
ノヴァーラ人に与ふるなからんため糧食(かて)を身の固めとなせといへ
(山川丙三郎訳 岩波文庫『神曲』(上)地獄 168頁)
3.今道による補足
(再生時間 14分42秒)
- ボッティチェルリが描いた「ダンテを導くベアトリーチェ」について
- 今回の書物で「天国篇」に多くページを割いた理由
- 「煉獄篇」には注釈が多いが、「天国篇」にはこれまで優れた注釈書が少ない
- ダンテの詩の韻について(『ダンテ「神曲」講義』343-344頁参照)
- ダンテの詩の響きを伝えるために苦心
- 和歌における韻について
難波潟 短き葦の 節の間も
逢はでこの世を 過ぐしてよとや
4.古典とはなにか
(再生時間 18分49秒)
稲垣
- 人生の危機に面したときに、精神の力を与えるもの
- 超越への憧憬を喚起するもの
- 現代を彫刻するもの、現代的な意義をそなえたもの
- 信仰のあるなしに関わらず、万人に開かれているもの
- 『神曲』は古典たりえるか
- ダンテの宇宙観/「卑しげなありさま」をした地球
- ちっぽけな価値観に閉じこもっている現代人
今道
- 「クラシックス」という言葉の語源
- 艦隊を寄付できるクラシクス
- クラシクスとプローレータリウス
- 古典を読むことで危機に際して精神的に打克つことができる
- 愛の大切さを学ぶ古典
- 補足として、岡戸久吉氏訳のダンテ『神曲』について
5.質疑応答
(再生時間 19分44秒)
今道
Che’ l’ardor santo, ch’ogni cosa raggia,
Nella piu’ simigliante e’ piu’ vivace.
万物を照らす聖火の影は
似るものの中で生きて輝く(天国篇 7.74-75)
in me guardando, una sola parvenza,
mutadom’io, a me si travagliava.
唯一の姿が多様に見える、
私の変化で変わって見えた(天国篇 33.113-114)
- 『神曲』には魂の宝になるような言葉がたくさんある
樺山
- アダムとイブが食べた林檎と聖母子像に描かれる林檎の関係
稲垣
- 地獄をつくった神の愛(フィリア)について
- ダンテの人間観/どんなに惨めな状態にあっても人間の本性は変わらない
- 地獄においても人間の本性が現れる
- 「エデンの園」と「天国」とはどう違うか
樺山
- 地獄・煉獄・天国を通して現世を表現したダンテの『神曲』
- 現世は煉獄を範型として描かれる
6.会場からの質問とまとめ
(再生時間 6分1秒)
会場からの質問
- マルクスによる『神曲』の引用について
- 多様的な意味とその享受の広がりが古典の魅力
今道
神の善意から他者を経ないで
したたるものには終わりはなくて
善意の刻んだ象(しるし)は消えぬ。 (天国篇 7. 67-69)
- クリティークとは良いものを選びだす意
- 賛美の対象を探してみる経験が大事
コンテンツ名 | 今道友信「ダンテ『神曲』講義」出版記念ダンテ・フォーラム |
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収録日 | 2002年11月16日 |
講師 | 今道友信、稲垣良典、樺山紘一 |
簡易プロフィール | 講師:稲垣良典(長崎純心大学教授・九州大学名誉教授) 講師:今道友信(英知大学教授・東京大学名誉教授) 講師:樺山紘一(国立西洋美術館長・東京大学名誉教授) 肩書などはコンテンツ収録時のものです |
会場:東京・学士会館 |
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