日米幼児・児童教育の比較文化論 日本の幼児・初等教育の普遍性
対話1 日本の幼児・初等教育の普遍性
対話
キャサリン・ルイス(ミルズ大学教授・教育学)
土居健郎(聖路加国際病院顧問・精神分析学)
コーディネーター
須賀由紀子(エンゼル財団主任研究員・実践女子大学非常勤講師)
1.人間関係を中心的に考える
(再生時間 26分40秒)
- クラス持ち上がり制と班活動の重視
- 子供への平等な配慮
- 問題を抱える子供への接し方
- 子供の先生への敬意が前提に必要
「国際調査を見ても、日本の小学校の先生は、ほかの国の先生に比べて人間関係を大事にしているという結果が出ていますね。例えば子供をほかの子供の前で叱らないとか、子供と一緒にお昼ご飯を食べるとか、子供と一緒にお昼ご飯を食べることを大事にする国はほかの西洋には余りないですね。東南アジアにはあるみたいですけれども。あと家庭訪問を大事にするとか、子供一人ひとりと人間関係をつくることが教師の大事な仕事だということに賛成だと答える先生とか、観察だけじゃなくて、国際調査でもそういう結果が出ています。」(ルイス)
2.「全人教育」を志向する教育内容
(再生時間 11分54秒)
- 子供の多面的成長を教育の目標に掲げる
- 思いやりや達成感を育てる多彩な学校行事
- 発達心理学にかなった日本の小学校教育
「日本の幼稚園も小学校もそうだと思いますけれども、アメリカに比べて、子供の知的な発達だけではなくて、社会的な発達、道徳的な発達、人間として社会の一メンバーとしての発達を非常に丁寧に考えていると思います。例えば係の仕事とか、日直の仕事とか、当番の仕事も、非常に大事な役割を果たしていると思うんですけれども、学校の目標を見ていて、元気で遊ぶとか、協力し合うとか、思いやりのある子とか、知的だけじゃなくて、むしろ子供の学習に対する目標は少ないと思います。」(ルイス)
3.内発的な動機づけを大切にしている
(再生時間 21分17秒)
- 罰やご褒美によって子供を動かそうとする「行動主義」の考え方
- 子供が自発的に問題を解きたくなるような授業(てこの授業の例)
- アメリカにおける行動主義的な教育指導の例(児童へのイエローカード)
「ぜひ日本の特にお母さんたち、お父さんたちに考えてもらいたいと思うのは、日本の先生方は、短い目で見たら一番取りにくい道をとっていると思うんです。人間関係をつくるというのは非常に力も必要だし、辛抱強くないとできないんです。物で動かすというのはその意味では非常に簡単ですけれども、長い目で見たら、親しい人間関係をつくり、内発的動機づけを利用した方が、子供たちの立場から考えても、社会の立場から考えても、いいですね。」(ルイス)
4.子供たちが活発に学級経営に参加している
(再生時間 9分35秒)
- 子供たちが学級づくりをリードする
- 先生が子供たちを「見守る」ことの大切さ
「日本だと日直制度とか当番制度がありまして、子供たちがかわりばんこに、例えば「1時間目の勉強を始めましょう」とか、「先生、ありがとうございました」とか、リードするんですね。それを見ていて、アメリカの現場の先生が驚きますね。子供にこんな力があったのかとびっくりします。」(ルイス)
5.「反省」を大事にしている
(再生時間 11分41秒)
- 反省によって内発的な動機づけが育まれていく
「反省することが次の活動に響くというふうに考えて、先生方はいろいろ仕組みを考えていらっしゃるんですね。例えば自分の目標とか、班の目標とか、学期の目標とか、1週間の目標とか、いろいろあって、1週間の終わりに自分の目標をもし達成したと思えば別の目標を考えるとか、まだ達成していないと思えば同じ目標で頑張るとか、本当に毎日の生活に密接な関係を持っている。だから形だけのものじゃない。」(ルイス)
さまざまな分野に精通し、経験、知識豊富な講師の方々をご紹介します。