グレート・ブックスへの誘い

グレート・ブックスへの誘い

研究課題(1) 余暇時代の生活文化の研究
グレートブックスへの誘い

はじめに

1. エンゼル財団と「グレート・ブックス」

当研究所では、エンゼル財団のミッション「余暇時代の生活文化」の研究をすすめるにあたり、「グレート・ブックス(良書・古典)」に大きな関心を寄せてまいりました。

それは、

1) 余暇時代=人生80年時代。生涯にわたり人間性を高め、余暇と仕事のバランスのとれた充実した人生を楽しむためには、その道連れとして、良書・古典の言葉を心の友とするライフスタイルが大切なのではないか。

2) エンゼル財団の活動のシンボルのエンゼル。エンゼルは「目に見えない心」という概念で、人間の心のありよう(精神)を照らし出すメッセンジャー。人間の精神は、言葉で表されるので、言葉の探求はエンゼルの研究に等しい。言葉と精神を深めるには、「言葉の結晶」とも言える良書・古典を素材とすることが望ましい。

このような理由からです。

2.「グレート・ブックス」および「グレート・ブックス運動」について

「人間の心の危機において本当に精神の力を与えてくれるような書物や芸術。これが古典(classics)の本来の意味である」(今道友信)

「グレート・ブックス」とは、まさにこのような古典の書物であり、長い時の風雪に堪えて引き継がれ、現代のわれわれにも、人間とは何かについて、深い示唆を与えてくれるような書物です。

このような「グレート・ブックス」を、書棚の飾りとして並べておくのではなく、実際に手にして、取り出して、開いて、文字を通して著者の思考に入り、著者と対話し、そして、自らの暮らし・心の豊かさに満ちた生き方に結びつけていく、そうした人生を大切にすることへ動機づけていこう。このような運動を、本格的に行った先人がいます。「学習社会論」を論じたシカゴ大学学長R.M.ハッチンズと、ブリタニカ百科事典(第15版)の編集長もつとめた哲学者M.J.アドラーです。専門化・細分化していく学問の世界を憂え、経済効率優先の社会を危惧した彼らは、人間としての教養を身につけ、真の民主主義社会を支える心の自由を大切にした市民を育てることこそ大切と、全米で「グレートブックス運動」に取り組みました。

具体的には「グレート・ブックス」と呼ぶに相応しい書物を選定し、書物の中の古人の言葉に親しみ、時空を超えて著者と対話し、思考を深めていくためのダイアローグのプログラム(「グレート・ブックス・セミナー」)の開発が行われました。その方法論の真髄は、著者の言葉に尋ねながら(対話法・ダイアローグ)、その書物(著者)の言葉が内包する人間精神の深み(グレート・アイディアズ)に近づいてゆき、その探索のプロセスを通して、人間や文化に対するものの見方を豊かにしていこうというものです。

3.日本における「グレート・ブックス運動」

アドラーの思想の理解を踏まえ、10年以上の歳月をかけて「日本におけるグレート・ブックス運動」に取り組んだのは、財団法人かながわ学術研究交流財団の「名著と学びのプロジェクト」です。私どもは、このプロジェクトで共同研究させていただく貴重な機会に恵まれ、「日本における学習社会の実現」という高い理想を共に考え、さらには『世界の名著』『中公クラシックス』の中央公論新社のご協力を得て、グレート・ブックスの理論と実践の研究を重ねることができました。当レビューの研究成果は、このプロジェクトなしには生まれることはなかったと言っても過言ではありません。
このプロジェクトからは、神奈川県立図書館、横浜市中央図書館のグレート・ブックスへの取り組み、市民サークル「アゴラ・ソクラティカ」の誕生など、様々な運動が展開されています。

4.当サイトのこれから

エンゼル財団の「ダンテ神曲講義」「源氏物語講義」も、この「グレート・ブックス」の精神をふまえ、古典の価値に本格的・本質的に誘うことを目指すコンテンツです。これらのコンテンツを、ただ配信するだけでなく、それらを生きた形で暮らしの豊かさに結びつけていく支援システムの構築は、私どもの重要な課題の一つです。

「グレート・ブックス」の精神を大事にしていくことは、来る生涯学習社会の基本理念・基本構想とそして具体的なサービス・プログラムの一つのモデルを作り上げていくことになるでしょう。その意味で、グレート・ブックスの理念と方法、それを踏まえた実際の応用例の蓄積を重ねていくことが大事と考えます。そして、さらには、「グレート・ブックスからグレート・カルチャーズへ(書物から芸術諸領域の表現へ)」と視野を広げ、文芸・芸術を奥深く楽しむライフスタイルの提案に力を注ぎたいと考えています。私どもは、そのような観点から、様々な研究コンテンツを随時発表していく所存です。

目次

(1)理論篇

グレートブックスの歩み M.J.Adlerからのメッセージ
須賀由紀子 エンゼル財団主任研究員

学習社会の実現とネットワーク社会
犬塚潤一郎 実践女子大学助教授

(2)実践編

看護学グレート・アイディアズ・セミナー 看護・ことば・コンセプト
江藤裕之 長野県看護大学助教授

教養としての古典学習の事例研究
須賀由紀子 エンゼル財団主任研究員

動物の魂―天使の心/ 赤い色合いの天使
ウルズラ・リュットン (アート・プロデューサー)

コンテンツ名 森永エンゼル・カレッジ 研究紀要 グレート・ブックスへの誘い
収録日 2005年8月3日
講師 財団法人エンゼル財団 エンゼル学芸研究所
簡易プロフィール

財団法人エンゼル財団 エンゼル学芸研究所

 

肩書などはコンテンツ収録時のものです

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