エンゼル食ラボ おにぎり編
第1回「おにぎりを通して日本の文化を学ぼう」
日本人の創意工夫が凝縮された「おにぎり」。とてもシンプルな食べ物ですが、そこには日本の人々の食に対する創造や工夫と共に、日本の国のあゆみも見ることができます。そんな日本のソウルフード「おにぎり」を通して、日本の食文化と地域の特色に迫ります。
おにぎりから見える日本の文化史
おにぎりはいつ頃誕生し、どのようにして、日本全国に広まり、今に至るまで食されてきたのでしょうか。その歴史をたどると、日本の文化史が見えてきます。
●おにぎりは神様へのお供え物
石川県埋蔵文化財センター蔵
日本最古のおにぎりといわれている 石川県杉谷チャノバタケ遺跡で出土された炭化米塊。弥生時代、おにぎりは日常食ではなく神へのお供え物であったと考えられています。
●源氏物語に出てくるおにぎり
蒸した米を卵型に握った「屯食」(とんじき)。「源氏物語」にも登場し、平安時代は儀式や宴などで役人に振る舞われたと言われています。そして、戦国時代には、戦(いくさ)の時の貴重な兵糧として、保存性を高めるために、梅干しや塩、味噌が加えられました。
●江戸時代、庶民の旅や行楽の携行食としておにぎりが広まった
国立国会図書館蔵
歌川広重「東海道五十三次細見図会 藤沢」には、金比羅参りの旅人が、三角形のおにぎりを食べている様子が描かれています。戦乱の世が終わり、江戸時代になって街道が整備されると、人々は旅行や行楽を楽しむようになり、その時に携行食としておにぎりが広まったと言われています。
おいしいおにぎりの作り方
誰でも簡単に作れるおにぎり。でも、作り方によっておいしさが大きく変わってきます。日本料理の名人がその極意を伝えます。
●料理人 野﨑洋光が伝授するおにぎり作りの極意
野﨑さんのおにぎり名言①
「おにぎりは握ってはいけない」
〈おいしいおにぎりの極意~握るのではなく、ふんわり“むすぶ”〉
1、炊き上がったお米はすぐに広げて粗熱をとる
2、塩水で味のムラを無くす
3、具を入れ 手の腹を使ってお米を転がす
4、お米の間に空気を入れる
さらに、お椀を使った「究極のおにぎりの作り方」も動画の中で紹介されています!
野﨑洋光さんの“思い出のおにぎり”は、大正生まれの母親が作ってくれた 海苔に包まれたまん丸なおにぎり。
野﨑さんのおにぎり名言②
「噛みしめたときに、おにぎりがふんわりと口の中でほぐれる感じ。それで心がほぐれ、心がむすぶ。それがおにぎりを“むすぶ”という由来だと私は思います」
おにぎりから見える地域文化
日本の各地域には、その地方独特のおにぎりが生まれ、今も親しまれています。それぞれのおにぎりからは、その地域の文化や歴史が見えてきます。おにぎりを通じて日本を旅してみましょう。
●おにぎりの形は主に4パターンあり、地域によって異なります。
「三角型」…全国に普及している。
「丸型」…中部地方を中心に、四国・中国・九州に広まった。
「円盤型」…主に、東北地方の日本海側から北陸地方にかけて、雪深い地域で見られる。
「俵型」…主に、関西地方に見られる。
●地域に伝わる伝統おにぎり
「けんさ焼き」…味噌を塗った円盤型の焼きおにぎり(新潟県)
寒い地域では、冷めて固くなってしまったおにぎりを、焼いて食べる方法が広まりました。火が通りやすいように、平たい円盤型の形をしています。
※けんさん焼きともいう
「黒豆おにぎり」…丹波の特産黒豆を混ぜたおにぎり(兵庫県)
日本有数の黒豆生産地である兵庫県で、 祝い事、祭などのときに作られます。
地域の伝統的な特産品である黒豆を使ったおにぎりを、神様にお供えする
という意味もあります。
「若生(わかおい)おにぎり」…昆布で包んだシンプルなおにぎり(青森県)
冬の気象条件の厳しい東北では、海苔がとりづらく、
炊き立てのご飯を若生昆布で包んでいます。
その他にも、様々な地域に、その土地の特産品や、昔からの暮らしに結び付いたおにぎりがあります。みなさんの住んでいる所にはどんなおにぎりがあるでしょうか。そのおにぎりに込められている地域の文化の特色と歴史を見つけてみましょう。
コンテンツ名 | エンゼル食ラボ おにぎり編 第1回「おにぎりを通して日本の文化を学ぼう」 |
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収録日 | 2021年11月5日,21日 |
講師 | 増淵敏之 法政大学大学院政策創造研究科教授 野﨑洋光 「分とく山」総料理長 |
簡易プロフィール | 増淵敏之 法政大学大学院政策創造研究科教授(文化地理学) 肩書などはコンテンツ収録時のものです |
さまざまな分野に精通し、経験、知識豊富な講師の方々をご紹介します。