オリンピアン谷川聡准教授が探るコーチングスタイル研究
より良きアスリートを
育てるために
Introduction to the Coaching Style by Olympian Satoru Tanigawa Assoc Pro.
森永エンゼルカレッジで多くのアスリートとコーチのインタビュアーをつとめてこられた元オリンピック陸上競技選手の谷川聡先生。今回は谷川先生から、図子浩二 (2014)の論説に基づき、より良きアスリートを育てるためのコーチングスタイル概論についてご説明いただきました。 技術とメンタリティーの両面からアスリートをサポートするコーチングにおいて欠かせないこととは? これまでのインタビュー映像とともにご覧ください。
2つのコーチング行動を知る
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コーチングにおける目的と行動は主に2つに分類できます。ひとつは、スポーツ種目の競技力の向上を目的とした「指導型行動」、もうひとつは人間力の向上を目的とした「育成型行動」とよばれるものです。2つの目的と行動によって、選手自身が問題解決型思考を身につけていくことで、セルフコーチングできるようになることが最終目標です。
指導型行動
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専門スポーツ種目・一般トレーニング学
バイオメカニクス・スポーツ運動学・スポーツ栄養学など
- 知識
- 経験
- スキル
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選手の競技力の向上
育成型行動
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心理学・コミュニケーション
カウンセリング・教育学・感情コントロールなど
- 知識
- 経験
- スキル
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選手の人間力の向上
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問題解決型の思考技能醸成
コーチングスタイルは選手の成長とともに変化する
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かつてコーチングはコーチの人格や性格に根ざした固定したスタイルでおこなわれていました。
現在は「アスリートファースト」すなわち、コーチングの主体は選手やチームである、というのが基本的な考え方です。この考えにもとづき、選手の技術やメンタリティーの発達段階に応じてコーチングスタイルを次第に変化させていくことが必要とされています。選手は必要な知識を獲得し、それを活用して問題を解決する能力である知恵を得ていくことになります。知恵の獲得には省察を伴った経験の蓄積が重要であり、それと同時に問題解決型思考の技術が習得されます。
初心者
初期のモチベーションは高いが、課題は多い。技術や動き、体力の指導など指導型行動がメイン。
指導型コーチングスタイル
- 指導
- 育成
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中級者
熱心な指導型行動とモチベーション低下を防止する育成型行動の両方が十分に必要。
指導・育成型コーチングスタイル
- 指導
- 育成
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中上級者
すでに技術力は高い。競技の位置づけやプライオリティーが未確立で、未成熟なメンタリティを補完する育成型行動がメイン。
育成型コーチングスタイル
- 指導
- 育成
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エキスパート
高い競技力、安定したメンタリティーに成長している。量は少ないが最も高度な指導型、育成型行動が必要。
パートナーシップ型コーチングスタイル
- 指導
- 育成
コーチは選手のステージに見合ったスタイルを選択し、次のステージへ成長を導いていく役割を果たします。
さまざまなコーチングスタイルを動画でみる
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それでは、森永エンゼルカレッジのコンテンツから様々なコーチングの実例を見ていきましょう。コーチングスタイル別に、過去のインタビュー映像の中から選りすぐったものをご紹介します。
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中級・中上級者
コーチングスタイルの考え方
「オリンピアン・谷川聡准教授が探る」シリーズ
谷川先生のインタビューコンテンツをもっとご覧になりたい方はこちら
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谷川 聡筑波大学准教授
1972年、東京都生まれ 元ミズノトラッククラブキャプテン・元JOCアスリート委員。シドニー・アテネのオリンピアン。
専門種目は陸上競技110mハードル。2度にわたって日本記録を更新(1999年、2004年)。
研究分野はスポーツトレーニング論・コーチング論。陸上競技のみならず、サッカー、野球、ハンドボール、バレーボール、テニス、ホッケー、スケートなどの国内外のトップ・アスリートの指導にあたる。主要論文に「競技者と一般人の歩行と走行」、「球技系競技者の年間トレーニング・プログラム」など。
森永エンゼルカレッジのスポーツカテゴリーでは長年にわたりインタビューアーを担当。
参考:
- 図子浩二 (2014)「コーチングモデルと体育系大学で行うべき一般コーチング学の内容」 コーチング学研究 第27巻第2号,149~161
- 文部科学省(2015)新しい時代にふさわしいコーチングの確立に向けて~グッドコーチに向けた「7つの提言」
- 三隅 二不二『組織行動の心理学』(ダイヤモンド社 1972)
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