自然への愛と家族の暮らし
森永エンゼルカレッジでは、平成18年度、「こどもプロジェクト研究会」を開催しました。「家族と体と心」というメインテーマのもと、子供のあり方、家族のあり方を考える研究会です。
今回は、「植物の姿・かたちを愛でることから始まる自然への愛と家族の暮らし」と題して、植物の分類学者で、現在、子供のための自然観察の活動にも力をいれておられる、国立科学博物館名誉研究員の近田文弘先生をお招きし、お話をうかがいました。
森永エンゼル・カレッジ 子育て支援研究フォーラム
こどもプロジェクト研究会メンバー
天野正子(東京女学館大学副学長)、江藤 裕之(長野県看護大学(外国語講座)助教授)、須賀由紀子(エンゼル財団主任研究員)、土屋 薫(江戸川大学社会学部助教授)、松田純子(実践女子大学生活科学部助教授)、松田義幸(実践女子大学生活文化学科教授・エンゼル財団理事)
植物の姿・かたちを愛でることから始まる自然への愛と家族の暮らし
1.序論
(再生時間 8分27秒)
分類というものを通して、物事をしっかりとつかまえられる。物事の理解は、分類するということと同時に、名前を付けるというがあるのです。名前を聞いたら、その名前の実態がイメージとしてわかることが非常に大事なのです。
名前を付けるということによって、相手をしかと意識の中に認識するという非常に大事な働きがあるので、自然に対しても、相手の名前がわかって、それが見えてくるということが大事なのです。
- 『ふところにいだく生命の水・富士の自然』(大日本図書)
- 『植物の世界』(丸善)
- 『草の名前が葉っぱでわかる 』 (大日本図書)
2.風景論
(再生時間 19分10秒)
人間の一生の中で、ある時に風景的な感性を、要するにショックを受けないと、風景的な感性は育たないのです。その時がいつかというのは実はまだよくわからないのだけれども、私が思うには、1つは思春期なのです。思春期になると、男性はやたらと放浪したくなって、ふらふらする。その頃にすごくよい風景体験をすると、それが一生その人の宝になって、そういうことに興味を持つ。ですから、子供たちによい風景体験をいつやらせるか、どういう形でやらせるかということは、非常に大事な視点です。
- 風景認識の考え 西洋と東洋
- 「八景」の起源 ― 瀟湘川の風景
- 風景を客観的に見なかった芭蕉
- 森を見る眼 ― 皇居の森のケヤキ
- 富士山は風景論の学習にちょうどよい場所
3.ミクロの世界をみせる
(再生時間 6分11秒)
普通の肉眼の世界だけではすぐ飽きてしまうのだけれども、肉眼よりもちょっと外れた世界、つまり見たことのない世界で、見たことのないものが見えるというところがすごく大事ではないでしょうか。
- ルーペでシダを観察する
- 花を見せるときには、いろいろな花で比較をして見せる
4.植物の名前を覚える&Ⅴ.結論
(再生時間10分10秒)
自然観察ではかつて、採集会とか勉強会というのがずっと行われてきたのです。それは山に行って、偉い先生が植物の名前をともかく言うのです。そうすると、弟子たちは後ろから付いていって、これは何ですよというから、採って押し葉にして名前を覚える。それは実はすごくよい方法なのですけれども、自然保護ということが叫ばれるようになったときに否定されたのです。やたらと植物を採るというのは自然破壊ではないかと。それで一切採集はだめと。私はいまになって思うと、それはやはり間違いで、名前というのはすごく大事なのです。名前というようなものを1つ手がかりにして、人間は相手を非常に深く理解できる。
- 葉から植物の名前を探す
- 名前がわかったらお終いなのではない
- 自然科学的な目で見る自然と、心・感性で見る自然
5.ダイアローグ
近田先生のお話のあと、ひきつづいて研究会メンバーの先生方との対話がなされました。
対話の模様は、PDF形式のドキュメントにてお読みいただけます。
植物の姿・かたちを愛でることから始まる自然への愛と家族の暮らし/ダイアローグ
(PDF形式・597KB)
参考図書
『草の名前が葉っぱでわかる』
発行:大日本図書( 2001年)
近田 文弘/おくやま ひさし/ かわうち やよい 共著
ISBN-10: 4477011695
『植物の世界―さまざまな環境を生き抜く植物を模型断面でみる』
発行:丸善( 2007年)
近田 文弘 著
ISBN-10: 4621043102
コンテンツ名 | 森永エンゼル・カレッジ 子育て支援研究フォーラム 「植物の姿・かたちを愛でることから始まる自然への愛と家族の暮らし」 |
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収録日 | 2006年12月8日 |
講師 | 近田文弘 |
簡易プロフィール | 講師:近田文弘(国立科学博物館名誉研究員) 1941年新潟県生まれ。京都大学大学院理学研究課修士課程終了。理学博士。国立科学博物館植物研究部植物第一研究室長。植物の名前を正しく知る植物分類 学や各地でどんな植物が生えているかを知る植物地理学が専門。山野から集めた押し葉標本を元に研究。自ら標本庫の虫と称する。 肩書などはコンテンツ収録時のものです |
制作・著作:財団法人エンゼル財団 |
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