桜の話-植物観察の勘どころ
森永エンゼルカレッジでは、平成18年度、「こどもプロジェクト研究会」を開催しました。「家族と体と心」というメインテーマのもと、子供のあり方、家族のあり方を考える研究会です。
今回は、「桜の話―植物観察の勘どころ」と題して、植物分類学者で、子供のための自然観察の活動にも力をいれておられる、国立科学博物館名誉研究員の近田文弘先生をお招きし、お話をうかがいました。
森永エンゼル・カレッジ 子育て支援研究フォーラム
こどもプロジェクト研究会メンバー
天野正子(東京女学館大学副学長)、江藤 裕之(長野県看護大学(外国語講座)助教授)、須賀由紀子(エンゼル財団主任研究員)、土屋 薫(江戸川大学社会学部助教授)、松田純子(実践女子大学生活科学部助教授)、松田義幸(実践女子大学生活文化学科教授・エンゼル財団理事)
桜の話-植物観察の勘どころ
1.花は桜木、人は武士というけれど
(再生時間 16分39秒)
花は桜木、人は武士といいますが、実は日本ではすごくたくさん桜の話があって、桜に関する本もたくさん出ています。それは実はすべて人間サイドから桜を見たものです。 では桜自身で自分を語るとどうなるか。つまり桜が桜の生き様を語るというのが今日のテーマです。
そこで考えたいことは、桜や自然に関する知識は、いま大変蓄積されているのですけれども、その知識からうまく想像して、生き物の姿を描き出してみる。桜というものを総合的な形で描き出してみる。こういうことをやってみようと思うのです。それは別な言葉で言うと、博物学ということです。
- 日本の桜の祖先
- 野生の品種とそれから作られた園芸品種
- 江戸時代に作られたソメイヨシノ
2.なぜ桜は見事な花を咲かせるのか
(再生時間 28分24秒)
桜はなぜ見事な花を咲かすか。それは人間のために咲いているのではなく、種をつけてそれをばら撒くためです。桜というのは、種をいかにばら撒くかということをすごく考えている木なのです。
- 種をつけてばら撒くための桜の作戦
- 早春に花を咲かせる桜・・・早春開花
- たくさんの花を咲かせる・・・爛漫開花
- 一斉に開花する・・・一斉開花
- 短時間だけ花を咲かせる・・・短時間開花
3.桜が子孫を残すために
(再生時間 10分21秒)
どうやって桜が種を撒き散らすか。これも非常に桜独特の作戦があるのです。それは3つほど考えられます。早く果実を作ることが一つです。それから有毒の果実を作ることです。それから埋土種子を作る。この3つの作戦で、桜は出来た種をうんとあちこちに散らばすのです。
- 花が散る時にはもう小さなサクランボが出来ている
- まだ緑色の実の外側の皮にには毒が
- 色が赤くなるにしたがって毒気が抜ける
- 熟した実を鳥に食べさせて遠くに種子をばら撒く
- 土の中で休眠・・・埋土種子
4.桜という樹木の特徴
(再生時間 22分23秒)
樹木というのは、人間が一人ひとり違うのと同じように、一本一本、自分のいた環境によって違った生活を示します。ですからすごく面白いのですが、その上に、それぞれの種類ごとの特徴も持っています。逆に言いますと、種類ごとの形や生活を持っているけれども、それぞれがどういう環境で育っているかによって、またすごい違いが出てくる生き物なのです。
- 桜は周りに何も無いような場所で日光の当たるところが大好き―陽樹―
- 横へ横へと枝を開いて効率よく日光を受ける
- 太い幹と太い根・・・根際に重心を置く
- 成長が早い
- 浅根性
5.ダイアローグ
近田先生のお話のあと、ひきつづいて研究会メンバーの先生方との対話がなされました。
対話の模様は、PDF形式のドキュメントにてお読みいただけます。
桜の話―植物観察の勘どころ/ダイアローグのまとめ
PDF形式・4.3MB
コンテンツ名 | 森永エンゼル・カレッジ 子育て支援研究フォーラム 「自然観察への誘い」 |
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収録日 | 2007年9月7日 |
講師 | 近田文弘 |
簡易プロフィール | 講師:近田文弘(国立科学博物館名誉研究員) 1941年新潟県生まれ。京都大学大学院理学研究科修了。理学博士。国立科学博物館植物研究部室長など歴任。専門は植物分類学で種子植物の系統分類、植物相の研究が主。その他、博物学、樹木学、植生学、民族植物学、景観学、環境科学、地球環境論、自然保護、自然観察など幅広く関心を寄せる。山野の押し葉標本を収集。自らの足で歩いて、自然を「観る」ことを推奨する。 肩書などはコンテンツ収録時のものです |
制作・著作:財団法人エンゼル財団 |
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