講師プロフィール

岡野 弘彦おかの ひろひこ

歌人

歌人。大正13年(1924年)、三重県に生まれる。國學院大學国文科に在学中より折口信夫に学び、雑誌「鳥船」に参加。折口の没年まで師事する。 昭和42年、処女歌集「冬の家族」で現代歌人協会賞を受賞。昭和54年から宮中歌会始の選者を努める。
主な歌集に『滄浪歌』(迢空賞受賞)、『海のまほろば』(芸術選奨文部大臣賞)、『天の鶴群』(読売文学賞)、『折口信夫伝』(和辻哲郎賞受賞)などがあるほか、古代研究、評論などの著作多数。
日本芸術院会員、國學院大學名誉教授、國學院大學栃木短期大学学長、宮内庁御用掛(和歌)。

※肩書などはコンテンツ収録時のものです

第184回 「幻」より その2

冒頭、折口信夫の「眺めの文学」に触れ、本文に入る。入道の宮(女三の宮)を訪れた源氏は、失望して、久し振りに明石の御方の許に行く。語り合うが、紫の上と比べてしまう。四月には花散里から夏衣の便りが来る。

第183回 「幻」より その1

冒頭、日本人の文化伝統に触れ、「幻」の卷に。源氏は正月に来た方々と会おうとしないが、兵部卿の宮とは対面し、長年使えてきた女房とは昔話をする。二月になると、若宮(三の宮、匂宮)と桜を見、微笑むこともあるが、涙ぐむ。

第182回 「御法」より その3

大将の君(夕霧)も退出しないでいる。源氏は寝ても覚めても阿弥陀仏を念じている。今上帝やさまざまな方々が弔問に訪れる。致仕の大臣もたびたび弔問され、冷泉院の后の宮(秋好む中宮)も弔問される。源氏は仏へのお勤めをしている。

第181回 「御法」より その2

紫の上が姿を隠してしまう回。紫の上は可愛がっている三の宮(後の匂宮、当時五歳)に大人になったら二条院にお住み下さいと伝える。秋には中宮が見舞いに来て、源氏も部屋に入り、紫の上を看取る。源氏は夕霧を呼び寄せる。

第180回 「御法」より その1

これからの卷について触れ、「御法」に。危篤状態は脱しが病弱になった紫の上は、出家を望むが、源氏は許さない。長い時をかけて書かせた法華経を供養し、明石の君、花散里に最後が近いこと歌にして贈る。夏には、明石の中宮とは語り合う。「紫の縁(ゆかり)」に触れて、この回を終わる。

第179回 「夕霧」より その11

(帰らないという雲居雁に)夕霧は三条邸の残してきた子どもの話をし、姫君にも声をかける。父の到仕大臣は物笑いになったと嘆き、息子の蔵人の少将を一条の宮に使いに出す。落葉宮は書きさしたままのように返歌を差し出す。藤典侍が雲居雁に文をおくる。

第178回 「夕霧」より その10

夕霧は雲居雁の話ながら涙を流し、雲居雁も昔を思い出し涙が出てくる。一条の宮に戻った夕霧を小少将は塗籠の中に導く。夕霧は言葉を尽くすが、(落葉)宮は泣いている。朝の光の中で落葉宮の顔を見る(契りを交わす)。三条殿(雲居雁)は大殿(父の到仕大臣)の邸に帰り、夕霧は雲居雁を迎えに行く。

第177回 「夕霧」より その9

一条殿はざわざわしている。夕霧は小少将をせっつくが、(落葉)宮は塗籠に入って錠をおろしてしまい、夕霧は泣きながら退出し、六条院で東の上(花散里)と語り合い、源氏の御前に出、三条殿(夕霧の本邸)に帰る。女君(雲居雁)は怒ってみせる。

第176回 「夕霧」より その8

六条院(光源氏)も夕霧と落葉宮との評判を聞き、心配し、息子の大将(夕霧)と語り合うが、夕霧は落葉宮のことは口に出さない。夕霧は御息所の四十九日の法事を引き受け、落葉宮を一条の御殿に移す準備をし、落葉宮は帰邸する。

第175回 「夕霧」より その7

冒頭、大野晋編『古典基礎語辞典』を紹介する。大将(夕霧)は少将の君を通して話しをするが、素っ気ない返事に、帰られる。帰途に一条の宮の前を通る。上(雲居雁)は夕霧の態度の変化を嘆く。小少将の君が(落葉)宮の手習いを届ける。

第174回 「夕霧」より その6

冒頭、國學院大學創立130周年記念事業に触れる。大将(夕霧)は弔問に来訪するが(落葉)宮には会えず、配下に指図して帰る。九月になり、大将のお見舞に宮は返事をしない。女君(雲居雁)が二人の間に疑念を持つが、大将は決心して小野に向かう。

第173回 「夕霧」より その5

一日経ち、夕霧は御息所からの手紙を発見し、すぐに小野を尋ねずに、まず、返事を書く。御息所は返事が来ないため、気分がまた悪くなる。御息所は宮に話し嘆いているうちに、急に気を失い、亡くなってしまう。講義の途中に、折口信夫に関連する話がある。

第172回 「夕霧」より その4

夕霧からの手紙の内容を、御息所は少将の君に尋ね、御息所が鳥の足跡のような字で返事を書く。夕霧が読もうとすると女君(雲居雁)が奪ってしまい、隠してしまう。御息所からの手紙だと気づいている夕霧はさりげなく、探す。

第171回 「夕霧」より その3

夕霧は(落葉)宮に手紙を出すが、宮は読もうともしない。律師が御息所(宮の母)に夕霧の様子を語り、御息所は宮の女房(小少将)に真偽を問う。女房は詳しく話す。宮は御息所に会うが、話はしないで水入らずの食事を摂る。

第170回 「夕霧」より その2

供人を遠ざけた大将(夕霧)は御簾の内に入り、(落葉)宮に近づく。宮は襖の外で震え、女房は困り果てる。夕霧は心の内を伝えるが、宮は悔しい思いで聞き入れない。大将は宮に訴えるが、朝になり、宮の心に従って退去する。

第169回 「夕霧」より その1

物の怪に悩んだ御息所(一条の宮の母)は小野の山荘に移り、宮も移る。大将(夕霧)は贈り物をし、宮が返信する。大将の北の方は察するが、小野を訪問し、女房達と語らい、二の宮(落葉宮)と和歌の贈答をする。

第168回 「鈴虫」より その2

八月十五夜、蛍兵部卿の宮や大将の君(夕霧)も参上し、管弦の宴が催される。源氏は柏木を思い、涙に袖を濡らす。冷泉院から手紙が来て、源氏らは参上し、詩歌管弦を楽しむ。六条院(源氏)は秋好中宮を訪れ、語り合う。

第167回 「鈴虫」より その1

夏の頃、女三の宮の持仏開眼供養が行われた。源氏は指図し、主上や帝からも布施がある。源氏は女三の宮に配慮し、三条の宮を増築し、秋には庭を野原のようにし、虫を放った。鈴虫の声がかわいらしい。

第166回 「横笛」より その3

夕霧は源氏に一条の宮を訪ねた時の様子を話し、夢の報告をし、源氏は笛を預かる。柏木は、夕霧の遺言も報告するが、源氏は多くを語らない。講義の後半では「『源氏物語』は歌集でもある」と日本の歌について解説している。

第165回 「横笛」より その2

御息所(落葉宮の母上)は夕霧に笛を添えて贈り物をする。夕霧は柏木の夢を見、笛に対する執着を感じ、法要を営む。六条院に伺った夕霧を(明石女御の)三の宮、二の宮が取り合い、夕霧は若君が柏木に似ていると感じる。

第164回 「横笛」より その1

柏木の一周忌の源氏の態度に致仕の大臣(柏木の父)は恐縮する。山の帝(朱雀院)は女二の宮(落葉宮)や出家した女三の宮を思いやる。若宮はよちよち歩きを始める。夕霧は柏木の遺言を思い、一条の宮を訪ね、琵琶で想夫恋を弾く。

第163回 「柏木」より その6

御息所と話をした後、夕霧は致仕の大臣(柏木の父)を見舞い、一条の宮(落葉宮)に参上した話などをする。夕霧はたびたび、一条の宮を訪問する。人々は柏木を追憶している。神話の心の系譜を継ぐ物語としての『源氏物語』について解説している。

第162回 「柏木」より その5

若君を見て、源氏は柏木を思い涙がこぼれる。大将の君(夕霧)は柏木や女三の宮のことに思いをはせる。柏木の法要が行われる。夕霧は一条の宮(落葉宮)を訪問し、御息所(落葉宮の母上)と話す。

第161回 「柏木」より その4

夕霧が柏木を見舞う。柏木は、六条の院(源氏)の怒りがとけるように、と夕霧に頼む。柏木は亡くなる。女三の宮の若君の五十日のお祝いをする。尼姿を見て、源氏はお嘆きになる。

第160回 「柏木」より その3

父の朱雀院に出家を望み、源氏は反対するが、女三の宮は受戒する。出家したので、六条の御息所の死霊が声を出して笑う。衰弱した柏木は、妻の女二の宮(落葉宮)を思う。柏木は権大納言に特進する。

第159回 「柏木」より その2

芭蕉の連句に触れ山伏の話題から本文へ。女三の宮の返事に、柏木はすっかり弱ってしまう。女三の宮は男君(のちの薫)を産むが、源氏の態度に、出家を望む。出家した父の朱雀院が見舞いに来る。

第158回 「柏木」より その1

折口信夫と『源氏物語』に触れ、柏木の卷に。衛門督の君(柏木)は病床で思いを巡らし、女三の宮に手紙を書く。しぶしぶ書いた返事を小侍従が届ける。父の大臣は葛城山の行者を呼び寄せる。

第157回 「若菜下」より その15

途中で退出した柏木は、大層重い病気で臥してしまい、二の宮に別れて、泣く泣く父の屋敷へ移った。朱雀の五十の賀は延びに延びて、歳末の二十五日に行われた。最後に、折口信夫の『源氏物語』について、解説する。

第156回 「若菜下」より その14

源氏が女三の宮に対して言い諭す。源氏は衛門督(柏木)を遠ざけてしまい、大将の君(夕霧)は勘づく。十二月に入り、六条院で試楽が行われる。源氏のところへ伺うのは心が重い柏木も参上した。源氏は柏木を睨み、皮肉を言う。

第155回 「若菜下」より その13

源氏は、(女三の)宮を哀れに思い、安産の祈祷などを命じた。源氏は右の大臣の北の方(玉葛)のことを考え、女三の宮と対比する。二条の尚侍の君(朧月夜)が出家したのを知り便りを出し、返事を紫の上に見せる。山の帝(朱雀院)の五十の賀を、十月に衛門の督の御預かりの宮(女二の宮)が催すことになった。朱雀院が女三の宮に手紙を出す。

第154回 「若菜下」より その12

遠野の話をしてから本文に。源氏は柏木からの手紙を発見し持っていく。眠っていた女三の宮は、小侍従からその話を聞き、ただ泣きに泣いてばかりいる。大殿(源氏)は手紙を何度も読み、柏木を軽蔑する。女三の宮、柏木は苦悩する。

第153回 「若菜下」より その11

折口信夫が参加した座談会を紹介し、本文に。息を吹き返した紫の上は仏の五戒だけを受け、小康状態を保っているが、源氏は六条院には行かれない。柏木は女三の宮に会いに来る。六条院で源氏は女三の宮の懐妊を聞き、不思議に思う。

第152回 「若菜下」より その10

女三の宮は怖がり、閉じこもっている。督の君(柏木)は深い物思いに沈んで臥し、女二の宮(落葉の宮)も嘆かわしく思っている。紫の上が仮死状態になり、物の怪(六条御息所、秋好中宮の母)が現れ、源氏に語りかける。

第151回 「若菜下」より その9

柏木は女三の宮との間を取り持つように、小侍従を説得する。賀茂の斎院の禊見物のために人が少ない六条院に、小侍従の手引きで忍んでいき、過ちを犯す。柏木は大殿(父の致仕の太政大臣の御殿)に帰る。

第150回 「若菜下」より その8

東日本大震災後について語り、本文に。紫の上が発病し、源氏が看病する。紫の上は二条院に移り、六条院の雰囲気は一変する。衛門督(柏木)は中納言になり、(女三の)宮の御姉の二の宮が降嫁する。女三の宮を諦めきれない柏木は、小侍従と語る。

第149回 「若菜下」より その7

東日本大震災を挟んでの回。冒頭、この間について触れ、本文に。源氏と紫の上との会話。紫の上は出家を希望するが、源氏は許さない。源氏が、これまでの女性との触れ合いのありようを語る。夕方に(女三の)宮の許に行く。

第148回 「若菜下」より その6

前回の補足から「日本人の歌」を解説し、本文に。源氏は夕霧に琴について論ずる。源氏も加わりくつろいだ演奏になる。夜も更け、演奏に参加した子ども達は褒美を与えられ退出する。大将(夕霧)は北の方(雲居雁)を思う。院(源氏)は対(紫の上のところ)へ渡る。

第147回 「若菜下」より その5

光源氏の音楽論、芸術論を解説し、本文に。大将(夕霧)は大層気持ちを改めて参上する。夕霧が、琴の音階を調え、短い曲を演奏する。四人の女性たちの演奏は見事だった。源氏が女性達の控えの場を覗かれる。源氏と夕霧が音楽に関して語り合う。

第146回 「若菜下」より その4

遊びの世界が描かれている。源氏は朱雀院の五十の祝を準備する。(女三の)宮に琴を教える。年が改まり、朱雀院の御賀を前に、六条院で女楽を催し、大将(夕霧)を招く。途中で、日本人にとっての「遊び」について講義されています。

第145回 「若菜下」より その3

源氏は住吉社頭の盛儀を催す。(明石の)尼君と歌を贈答し、紫の上、女御の君(明石の女御)、中務の君(紫の上の侍女)も唱和する。朱雀院は女三の宮との対面を希望する。講義の途中で、啄木と迢空について解説する。

第144回 「若菜下」より その2

(蛍)兵部卿宮は真木柱(大宮(式部卿宮)の孫)と結婚するが、幸せとはいえない。内裏の帝(冷泉院)は病気になり、譲位され、人事の異動がある。対の上(紫の上)は出家を希望するが源氏は許さない。源氏は住吉を参詣する。

第143回 「若菜上」その13~「若菜下」その1

「若菜上」を復習し「下」に。小侍従からの返事に柏木はいらいらする。三月末日に六条院で賭弓の儀式が行われ、衛門督(柏木)は大殿(源氏)に恐れを感じる。柏木は春宮から、女三の宮から贈られた猫を預かる。左大将(髭黒の大将)のその後。

第142回 「若菜上」より その12

(女三の)宮は降嫁したが、衛門督の君(柏木)は、あきらめることができない。源氏は寝殿の東面で蹴鞠を行わせた。猫が御簾を引き上げ、柏木は女三の宮を見る。柏木は小侍従に仲立ちをしてくれと文をだす。事情が理解できないまま小侍従は返事を書く。

第141回 「若菜上」より その11

明石の君のところに突然入ってきた院(源氏)は、入道からの文が来たことを聞き、遺言であることを悟る。源氏は明石の君に紫の上の慈愛の深さを説く。明石の君は謙遜する。大将の君(夕霧)が姫宮(女三の宮)、紫の上、北の方(雲居雁)を比較する。

第140回 「若菜上」より その10

御方(明石の君)が入道の文をご覧になり、尼君と語り合う。宮(東宮)からは早く参内するようにとのお召しがある。明石の君は御息所に入道からの手紙を見せる。明石入道一族について講義する。

第139回 「若菜上」より その9

三月に男子を出産し、大殿(源氏)も安心する。紫の上、明石の君は世話をする。明石の地で若宮誕生を伝え聞いた入道は、心残りはないと、山奥に移っていった。山に入る別れに、尼君と御方(明石の君)に手紙を出す。

第138回 「若菜上」より その8

師走に(秋好)中宮が、そして内裏は中納言(夕霧)に命じて、源氏の賀の祝をする。年が改まり、桐壺の御方(明石の女御)の出産が近づき、安産の祈願が行われる。大尼君(明石の入道の奥方)も来られ女御に昔話をし、尼君(明石の君)も加わる。

第137回 「若菜上」より その7

鎌倉八幡の大銀杏が倒れたことから、実朝、西行の和歌に触れ、本文に。桐壺の御方(明石の女御、源氏の娘)は懐妊し、六条院に里帰りする。源氏は朧月夜と密会する。紫の上は東宮の御方(明石の女御)と女三の宮に対面する。十月に対の上(紫の上)は院の四十の賀を催す。

第136回 「若菜上」より その6

院の帝(朱雀院)は二月には寺に移り、源氏と紫の上に手紙を出す。紫の上の返信の見事さに、朱雀院は胸を痛める。出家入山したので尚侍の君(朧月夜)は、二条の宮に移る。六条の大殿(源氏)は尚侍の君と会い、そのことを紫の上に語る。

第135回 「若菜上」より その5

二月の十日過ぎに朱雀院の姫君(女三の宮)が六条院(源氏)に降嫁する。最初の三日間、途切れることなく源氏が女三の宮の許に通うのを、紫の上は煩悶する。源氏の夢に紫の上が現れたので、早朝に戻る。紫の上に、あらためて心を深くひかれていく。

第134回 「若菜上」より その4

折口信夫と源氏物語全講会に触れてから講義に。紫の上は女三の宮の降嫁で心は陰るが表面はおっとりとしている。年が改まり、源氏は四十歳。左大将殿の北の方(玉葛)が、年賀の若菜の羹(あつもの)を源氏に進上する。四十の賀が催される。

第133回 「若菜上」より その3

源氏は女三の宮の後見役になることを躊躇する。師走には、女三の宮の裳着の式(成人式)が行なわれる。朱雀院は剃髪し、見舞いに来た源氏に女三の宮を依頼し、源氏は引き受ける。源氏はそのことを紫の上に伝える。

第132回 「若菜上」より その2

乳母は、男兄弟で、六条院(源氏)のところへも親しく出入りしている左中弁として宮廷仕えをしている人に相談する。朱雀院は女三の宮の将来を心配し、誰を婿にするかで苦慮する。女三の宮を迎えたいと思う方も多いが、東宮は源氏を推薦する。

第131回 「若菜上」より その1

折口信夫の「若菜」を解説して本文に。病気で出家に心が動いている冷泉院は、女三の宮の行く末が気がかりだった。お見舞いに来た中納言の君(夕霧)を考えるが、六条院(源氏)のことを思う。

第130回 「藤裏葉」より その3

年が明けると四十になる源氏の御祝いは、大きな準備である。その秋、源氏は太上天皇に准ずる御位を得る。内大臣もそれに続いて太政大臣に、宰相中将(夕霧)は中納言になった。夕霧は亡き大宮の住まいであった三条殿に移った。十月の二十日過ぎ、六条院に帝が行幸され、朱雀院もお渡りになるので、世間の人々も驚く。帝は、源氏の座を、今上の御座と先帝の御座と同列にした。源氏は紅葉の賀のときに若き自分が舞った「青海波」の折を思い出す。講義の最後に折口信夫に触れる。

第129回 「藤裏葉」より その2

夕霧と雲居雁は歌を交わし合い、六年の恋が遂げられる夜を持った。夕霧からの後朝の文を、ご覧になる父の内大臣には、夕霧に対する偏見がすっかりなくなっている。上賀茂神社の御阿礼祭りに六条院の方々が参詣され、大臣(源氏)は車争いの場面を思い出す。宰相中将(夕霧)は、祭りの使いの藤典侍(密かに情けを交わし合われる仲)に文を出す。紫の上は姫君の実母に当たる明石の上を後見役として推薦する。紫の上と明石の君は対面しされる。源氏は、安心し、出家遁世のことを思う。

第128回 「藤裏葉」より その1

冒頭、ベッドの上に短冊が置いてあるホテルの話をし、本文に。宰相の中将(夕霧)と女君(雲居雁)はちぐはぐな状態で、(内)大臣は、譲って折れておくべきだろう、と考えるようになった。館の藤の花が盛りのときに、内大臣は夕霧に文を出し、大臣(源氏)は直衣の色にも気を使って夕霧を送り出す。宴が催され、酔った夕霧は中将(柏木)に泊まらせて欲しいと頼み、柏木は雲居雁のところへ夕霧を案内した。

第127回 「梅枝」より その2

この御方(明石の姫君)は四月にいよいよ入内と定めて、立派に調度を整え、姫君がこれからの手習いの手本になるものも選び出した。源氏は紫の上に女性の筆跡を論じ、兵部卿宮とも書を論じる。内大臣はもの淋しく思い、姫君(雲居雁)とかの人(夕霧)のことで少し気弱になっている。源氏は夕霧に教訓を与える。夕霧は雲居雁に文を出すが、夕霧の縁談の噂を聞いた雲居雁からの返事に納得がいかない。

第126回 「梅枝」より その1

源氏は、明石の姫君の裳着のことを急ぐ。春宮(朱雀院の皇子)も、同じ二月に初めて冠をつけ一人前の男になられる儀式がある。正月の月末、源氏は薫物合を企て、兵部卿宮(源氏の弟)を判者として行われた。春宮の元服は、二月二十余日のころに行われることになり、源氏は姫君の参内を少し延ばた。講義の後半に和歌の伝統、即興について解説。

第125回 「真木柱」より その5

三月になり、源氏は玉葛を思い文を出すが、それを読んだ(髭黒)大将が返事を書く。源氏は、大層いまいましいことだと思う。十一月に、玉葛は大層美しい男子を生んだ。かの内の大殿の御女(近江の君)を宰相中将(夕霧)がたしなめる。最後に、本居宣長『古事記伝 神代一之巻』を解説。

第124回 「真木柱」より その4

折口信夫に関して書いたエッセイ(父子墓と没後の門人)から本文に。年改まってから、髭黒大将は、尚侍の君(玉葛)を宮中に参上させたが、宮仕えを心配する髭黒は退出を急き立て、自分の屋敷へ移した。二月になって、源氏と玉葛は文を交わす。

第123回 「真木柱」より その3

父宮(式部卿宮)は髭黒の様子を聞き、北の方の兄弟を差し向け、北の方は、男君、姫君を連れて屋敷を去った。母北の方(式部卿の妻)は、大層泣き騒ぎ、源氏を口汚く非難する。納得がいかない髭黒は式部卿宮を訪問するが、北の方、姫君には会えず、男君だけを連れ戻す。

第122回 「真木柱」より その2

「百人一首」から本文に。髭黒の大将の屋敷は落ちぶれたような感じで、奥方は非常に苦悩深い状態。暗く雪も降っているときに出かけようとする大将に、火取りの灰をかけてしまう。翌日、髭黒は玉葛の許へ行き、髭黒の屋敷では修法などをいろいろと勤め騒いでいる。髭黒はたまに屋敷へ帰っても、子どもたちばかりと会っている。

第121回 「真木柱」より その1

髭黒の大将は非常に喜んでいるが、玉葛の姫君は反対の気持ちで耐えている。大臣(源氏)も残念だと思っている。神事の多い十一月、女官や内司が尚侍の長官(玉葛)の決裁を仰ぐために繁々と出入りする。髭黒の大将は玉葛を迎えるための整いを改めている。講義の途中で折口信夫の源氏物語、民俗学について、解説。

第120回 「藤袴」より その2

服喪の期間が終わり、宮中へ出仕するのは十月のころに、と源氏は思う。玉葛に好意を持つ方々は焦っている。頭中将(柏木)が殿(父の内大臣)の使いでやってくる。(髭黒の)大将は懸想に励んでいる。最後に、慶應での折口信夫『源氏物語全講会』から『源氏物語』和歌についての講義を紹介。

第119回 「藤袴」より その1

玉葛の胸の中には、宮仕えすることにためらう思いがある。玉葛が大宮の喪に服すため薄い鈍色の喪服を着ている時に、少し濃い色の喪服の直衣姿の宰相中将(夕霧)が殿(源氏)の使者として訪れる。人払いして、思いを告げる。

第118回 「行幸」より その3

お祝いのものが、寄せられる。常陸の宮の御方(末摘花)からの贈り物に源氏は、大層あきれる。玉葛の裳着の儀式が執り行われ、源氏と内大臣は歌を贈答する。親王たちは様々に思った。さがな者の君(近江の君)の望みを内大臣は愚弄する。

第117回 「行幸」より その2

源氏は大宮に、玉葛を養育した経過について話し、大宮の口から内大臣に伝えてくれることを頼む。大宮からの便りで内大臣も訪れ、源氏と対面する。二人は若い日のしみじみとしたことの数々が思い出す。玉葛のことを聞いた内大臣は玉葛の腰結の役を引き受ける。裳着の日、大宮からお祝いと便りが来る。

第116回 「行幸」より その1

折口信夫の「行幸」を紹介し、本文に。源氏は玉葛の女の成人式である裳着の儀式を二月に行おうと思い、重要な役である腰紐を結ぶ役を玉葛の父である内大臣に依頼する。源氏は三条の大宮のところにお見舞いに行き、昔のこと、今のこと、様々に取り集めて申し上げる。

第115回 「野分」より その2

中将(夕霧)は源氏に命じられて(秋好)中宮を見舞う。源氏は中宮、明石の御方(君)、西の対(玉葛)、東の御方(花散里)を見舞う。夕霧は源氏と玉葛の様子に動揺する。夕霧は祖母宮(大宮)を見舞う。内大臣は大宮と、姫君(雲居雁)、不調なる娘(近江の君)について語る。

第114回 「篝火」~「野分」その1

前半は「篝火」。源氏は近江の君の噂を聞き、内大臣を批判し、玉葛は源氏に感謝する。秋になり、源氏は篝火を歌の中に引き込んで、思いのほどを詠む。源氏、源中将(夕霧)、頭中将(柏木)、弁少将(柏木の弟)が奏楽し、玉葛は聞いている。後半は「野分」。野分の風が強く、(秋好)中宮は秋の庭を心配し、中将の君(夕霧)は紫の上をかいま見る。夕霧は三条の宮(夕霧の祖母)を見舞う。

第113回 特別講義 六月晦日大祓-折口信夫と源氏物語

水無月の大祓の祝詞を『古典文学大系1』(岩波)武田祐吉の訳で講義。祓と禊の違いや青草人が農耕をする上で持つ罪障観を素戔嗚の神話に擬え慎んでいたのではと解釈する。また源氏物語に内包されている罪障観に言及。

第112回 「常夏」より その3

(内)大臣は北の対の今姫君(近江の君)の面倒をみるよう、女御の君(弘徽殿の女御)に申し上げる。内大臣は、簾を高く巻き上げ若女房の五節の君と双六をしていた近江の君と話す。近江の君と弘徽殿女御との歌のやりとり。最後に折口信夫に触れ、「常夏」は終わる。

第111回 「常夏」より その2

大臣(源氏)は姫君(玉葛)に内大臣家との関係を漏らす。源氏は和琴を弾き、和琴を礼賛する。源氏と玉葛は、世間に例のない難しい間柄である。内大臣は太政大臣(源氏)について、軽蔑の心で語る。内大臣は姫君(雲居雁)が昼寝しているのをいさめる。

第110回 「螢」その3~「常夏」その1

源氏は紫の上と物語について語る。源氏は中将の君(夕霧)と六条院の女性の方々の関係に配慮している。内の大臣は源氏と比べてみて、不本意に思っている。後半は「常夏」の巻に。源氏が夕霧と涼んでいると、殿上人たちがやってきて、内大臣の娘が話題になる。

第109回 「螢」より その2

「黒衣の旅人 折口信夫」に触れ、本文に。六条の屋敷の馬場で競射が行われ、女童は今風で見物する。大臣(源氏)は花散里のところで、別々に休んだ。五月雨が続き、六条院の女性の方々は絵物語などを心慰みにし、源氏は物語について語る。

第108回 「螢」より その1

相聞歌に触れてから「蛍」に。対の姫君(玉葛)には思いもかけなかった心配事が加わった。兵部卿宮はしきりに便りを寄せ、尋ねて来た。源氏は大層心配りをして、蛍の光りで姫の姿を浮かび上がらせる。兵部卿宮と玉葛は贈答する。

第107回 「胡蝶」より その3

今日の箇所は心の機微に入ったところが多くて細やかな文章になります、と語り、本文に。殿(源氏)は、玉葛を大層愛しいものと思うと、(紫の)上に語ると、紫の上は信頼している玉葛が可哀想だと答える。雨上がりのしっとりと感じられる夕暮に、源氏は、夕顔の記憶よりもさらに格段にまさった感じがする玉葛の手を握る。玉葛は困惑する。源氏からの後朝の文に、玉葛は、気分が悪いから、私の方からはこれ以上申し上げませんとだけ返す。

第106回 「胡蝶」より その2

折口信夫の講義前の予習や小林秀雄が訪ねてきた時の様子等に触れ、本文に。四月の衣替えの頃、対の御方(玉葛)への便りが頻繁になっていることに、源氏は満足する。兵部卿宮、右大将(髭黒大将)、内の大殿の中将(柏木)からの文もある。源氏は評論し、玉葛を教え諭す。

第105回 「胡蝶」より その1

「胡蝶」の巻の前半には春爛漫の六条院の、この上もなく華麗な場面があると解説して、本文に。六条院の春の町で、源氏は、唐風の装いをした舟を造らせ、船上で音楽を奏でさせる。夜になると、庭に篝火をともして管弦が催された。兵部卿宮が玉葛への思いを詠む。六条院へ下がってきている秋好中宮が、春の読経を勤める。途中、自著『恋の王朝絵巻・伊勢物語』について、触れる。

第104回 「初音」より その2

中央公論新社から『光源氏の物語』が文庫として再版されたことを紹介して、本文に。日の暮れ方のころに、源氏は明石の御方のところに渡り、泊まり、紫の上に弁解する。正月二日は臨時の年賀の客を供応し、管弦の遊びもする。忙しい時間の後に、常陸宮の御方(末摘花)や空蝉の尼衣を訪ねる。正月の男踏歌がある年で、宮中、上皇のいる朱雀院、それから源氏の六条院にやって来て、六条院の女性の方々も見物する。

第103回 「玉葛」その5~「初音」その1

年の暮れになって、正月の準備をし、女の方々に新しい着物を手配する。(紫の)上が、源氏のそばで案配している。お礼の返事の中で、末摘花からの文を読み、源氏は歌論を論じる。後半は「初音」の巻。年が改まる。物騒がしい朝を過ぎ、夕方になって、源氏は、(紫の)上、(明石)姫君、夏の御住まい(花散里)、西の対(玉葛)のところへ、年賀の挨拶に回る。

第102回 「玉葛」より その4

敬語、歌会始に触れ、本文に。右近は、夕顔の忘れ形見の玉葛に会ったことを源氏に語る。源氏は玉葛が美しいことを聞き、自分の娘分として引き取り、貴族社会に大きく羽ばたかせてやることが、自分のためにもなると考える。玉葛からの文の返事に源氏はほっとする。玉葛を右近が里の五条の家に移してから、六条院に移し、花散里に世話を頼む。中将の君(夕霧)にも親しく見舞ってやりなさいと言う。豊後介を家司にする。

第101回 「玉葛」より その3

前回の補足をしてから、先に進む。右近は、どこか見覚えのある豊後介や三条を発見する。三条と話し、乳母と話す。右近は姫君の姿を見て、大変美しいと感じる。一行はお籠もりをする。右近は大殿(六条院)に参上し、思いがけない方に会ったことを告げる。講義の途中で『大和物語』の百六十八段を解説する。

第100回 「玉葛」より その2

大夫監は、姫君(玉葛)の乳母の息子たちを呼び集めて説得する。祖母おとど(乳母)が対面し、当座をしのぐ。次郎は仲間に引き込まれたので、乳母は長男の豊後介と娘の兵部の君(あてき)を連れ玉葛と脱出する。京にたどり着く。頼るところのない一行は、岩清水八幡を詣で、初瀬観音を参詣する。夕顔の侍女だった右近も詣でていた。

第99回 「乙女」その7~「玉葛」その1

秋の彼岸のころ、一斉に六条邸へ移ることにしたが、(梅壷)中宮は五六日後に移る。九月に入り、梅壷(秋好)中宮と紫の上は春秋の良さのやりとりをする。大堰の御方(明石君)は十月に移る。後半は「独立した中編小説になり得るような世界なんです」と解説して玉葛に。忘れることのできない夕顔の遺児、西の京にいた若君(玉葛)は、乳母たちの一家に連れられて筑紫へ下り、理想的な姫君に育った。好色めいた田舎人どもが、思いをかけて文をやる真似事をする。その中に、大夫監という肥後の国の一族で、このあたりにかけてなかなか評判の者がいた。

第98回 「乙女」より その6

折口信夫が取り組んだ「原(ウル)源氏物語研究」に触れてから本文に。源氏は、二条の東院に閉じ困っている夕霧を、西の対にいる花散里に託す。年の暮れ、(大)宮はこの君(夕霧)の正月の装束を準備する。二月に、朱雀院に帝の行幸があり、昔を偲ぶ。帝と大臣(源氏)は大后の宮(弘徽殿太后、朱雀院の母)を訪ねる。大学の君(夕霧)は進士に合格し、秋の司召には侍従となる。大殿(源氏)は六条に新しい屋敷を作らせ、翌年の八月に六条院は完成する。

第97回 「乙女」より その5

折口信夫と藤井春洋に触れながら国学の伝統を説いて、本文に。大殿(源氏)は五節の舞姫として惟光の娘を出した。ふさぎ込んでいた大学の君(夕霧)は、舞姫(惟光の娘)を見て惹かれ、歌を贈る。殿(源氏)は昔を思い出し、筑紫の五節の舞姫に歌を贈る。夕霧が娘に手紙を出したことを知った惟光は喜ぶ。

第96回 「乙女」より その4

前半は、『死者の書』とその構成の変化を解説する。(内)大臣は(弘徽殿)女御を里下がりさせ、姫君(雲居雁)を(大)宮の許から引き取ることにする。大宮の計らいで、冠者の君(夕霧)と姫君(雲居雁)は対面する。乳母の嘆きが男君(夕霧)は憎らしかった。

第95回 「乙女」より その3

(内)大臣は冠者の君(夕霧)をもてなし、夕霧に笛を与える。内大臣はひそひそ話を聞き、夕霧と雲居雁の間を知る。内大臣は大宮を訪ね、不満を言う。内大臣は乳母と語り、乳母や女房たちは嘆く。何も知らない夕霧が大宮の許に来る。夕霧と雲居雁は煩悶する。

第94回 「乙女」より その2

源氏は、大宮(夕霧の祖母)や周りの人たちが、意外に思い、反対する中、夕霧を文章博士、文章道を大学で学ばせることにする。夕霧は二条の東院で勉学に努め、大学寮の試験に合格する。斎宮女御(梅壺女御)が后になり、大臣(源氏)が太政大臣に、(右)大将(昔の頭中将)が内大臣になる。冠者の君(夕霧)と姫君(雲居雁)は離され、手紙をやりとりする。大宮の許を訪ねた内大臣は姫君を呼び、琴を弾き、語る。

第93回 特別講義 『源氏物語』から読む日本人の心の伝統

本文を離れた特別講義。「『源氏物語』というのは日本人にとって一体何なのか、現代の我々がどういう気持ちで『源氏物語』を読めば、日本人の心の伝統に沿った読み方ができることになるのかということを少し考えてみたいと思うのです」。

第92回 「朝顔」その4~「乙女」その1

藤壺とは「紫のゆゑ」ある女君(紫の上)を諭し、朝顔、朧月夜、明石、花散里について語る。大臣(源氏)はその夜藤壺の夢を見て供養をする。賀茂祭に藤の花に添え朝顔の姫君へまじめな御文を。乙女の巻に入ると、夕霧が元服することになる。

第91回 「朝顔」より その3

自由学園の羽仁夫妻と折口信夫のこと等。源氏は式部卿宮の屋敷へ行き五の宮のところで鼾など耳にし、源典侍(げんのないしのすけ)に再会する。朝顔はつれない。女君(紫の上)が嫉妬する。雪の夕暮れ「童女下ろして、雪まろばしせさせたまふ」。

第90回 「朝顔」より その2

大臣(源氏)は式部卿宮の喪に服している朝顔を訪ねる。朝顔は心を受け入れず、源氏は「秋果てて霧の籬にむすぼほれあるかなきかにうつる朝顔」と、詠む。女君(紫の上)はそのやりとりに心が乱れる。霜月の雪の日にも桃園宮の朝顔を尋ねる。

第89回 「薄雲」その5~「朝顔」その1

梅壺に春秋の好みを尋ねると、秋に亡くなった母を偲んでいる。『万葉集』の額田王や『古事記』の春秋争いの挿話。他方で春に心を寄せている女君(紫の上)や明石の上に心をめぐらす源氏。桃園宮に五の宮を尋ね、朝顔を訪ねる。

第88回 「薄雲」より その4

冒頭正月に「若水をくむ」話。帝は、法師の話に臥せり大臣(源氏)の位が臣下であることを悩む。桃園式部卿も亡くなり「秋の司召」に帝は退位の気持ちを大臣(源氏)に話す。大臣(源氏)は「いとまばゆく、恐ろしう思」す。

第87回 「薄雲」より その3

歌人としての先生の年末年始に触れ、本文へ。大堰の屋敷で明石と大臣(源氏)が過ごす場面の後、太政大臣が亡くなる。入道后(きさい)の宮(藤壺)は、春のはじめよりお具合が悪く、「燈火などの消え入るやうにて果てたまひぬ」。法師は帝に出生の秘密をほのめかす。

第86回 「薄雲」より その2

明石の上は重い心を決め、雪かきくらす中、姫君との別れを惜しむ。源氏は「生ひそめし根も深ければ武隈の松に小松の千代をならべむ」と詠む。女君(紫の上)の手による姫君の御袴(はかま)着(ぎ)は「襷引き結ひたまへる胸つきぞ、うつくしげさ添ひて見えたまへる」。

第85回 「松風」その3~「薄雲」その1

大堰で大臣(源氏)が遊宴する響み(とよみ)が明石の上まで及ぶ。源氏は姫君を二条院へと思案しており女君(紫の上)に打ち明ける。女君(紫の上)は「稚児を得て、抱きかしづかばや」と思うようになる。薄雲に入り明治以降の詩歌の話など。明石の上に女君(紫の上)のことを話す。

第84回 「松風」より その2

明石の君が都に来たので、大臣(源氏)の気持ちは平静ではない。女君(紫の上)には苦しい言い訳をし、大堰の屋敷を訪ねる。幼い姫君は、将来の美しい姿を、ありありと予感させる美しさを持っている。源氏は尼君とも語り合う。源氏は御寺(嵯峨野の御堂)で毎月のお勤めをし、大堰の屋敷へ帰る。源氏が近くに造った桂の院に殿上人がたくさん集まっていた。源氏は、事態が公になってしまったので桂殿(桂の院)に行き、宴会を主催する。

第83回 「松風」より その1

源氏は二条の東の院を造営した。明石の君は自分の身分の低いことをわきまえ、若君の将来も思い、上京することを思い悩んでいる。明石の入道は娘のために、大堰川(おおいがわ)の岸辺の近いところにあった邸を修築する。近くには、内の大殿(源氏)が御堂を造営している。修築を知った源氏は、惟光を遣わして、整えさせた。明石の君は、母君、若君と上京する。大堰の家は、大変結構で、今まで過ごした海岸の景色が思い出された。途中、丸谷才一の書評に触れる。

第82回 「絵合」より その3

源氏が催す絵合で朱雀院は斎宮下向の儀式の絵を、源氏は須磨の絵日記を出す。琴(きん)の琴など、文才より本才に力を入れて修養した源氏に、出家への兆しが現われ始める。斎藤茂吉、近藤芳美や中村憲吉などの短歌について。

第81回 「絵合」より その2

入道后(きさい)の宮(藤壺)も前斎宮の帝への参内に立ち会う。冷泉帝は絵を好み、梅壺(前斎宮)と近しくなるが、弘徽殿も競い、父権中納言(頭中将)も後押しをする。物語の神髄について、歌合せ、絵合わせなど合わせものについて。

第80回 「関屋」~「絵合」その1

近著紹介の後、内弟子として折口信夫を看病した往時を偲ばれる。関屋の巻。空蝉が常陸介と上洛、逢坂の関で石山寺参詣の源氏と再会しやりとりをする。絵合。前斎宮は入内し梅壺女御に。「遥けき仲と神やいさめし」と朱雀院は嘆く。

第79回 「蓬生」より その3

源氏が花散里を訪ねる折り末摘花の邸宅を通り、姫は父君の夢から覚め泣いていたが、惟光に主を確かめさせ、源氏はかわらぬ様を知り躊躇するが、さりげなく現れ、花散里の様に感じるものあり、二条の東の院で大切に扱う。

第78回 「蓬生」より その2

この姫は父宮の心定めに添い古風に仏道の勤めもせず律儀に先祖伝来の心のありように従っている。侍従が受領階級の妻になっており、娘の後見役にしようかとさえ思い筑紫まで連れていこうとしている。

第77回 「澪標」その4~「蓬生」その1

前斎宮を帝のそばにと源氏は考え、朱雀院も近くにと望んでいる様子なので入道の宮(藤壺)に相談する。「王氏の文学と他氏の文学」の話や『バグダッド燃ゆ』について。蓬生の巻は蔭ながら源氏を待つ末摘花の心細い暮らしぶり。

第76回 「澪標」より その3

源氏は丁重な奉祀(遊び)をするので、気おくれした明石の君の一行の舟が漕ぎすぎたことを知り近いうちに都へ迎えようと伝える。御息所が前斎宮と都へ戻られ体調を崩し、見舞いに伺うと娘の後見役を頼み亡くなる。

第75回 「澪標」より その2

明石の君の姫君が重陽の節句に五十日に当たり祝う。その秋、住吉神社に参詣するが、時を同じくして、明石の君も参詣する。大殿腹の若君(夕霧)の美しい様にひきかえて、我子は、と悲しむ。先生の詠まれた母の歌について。

第74回 「澪標」より その1

源氏は桐壷院の法華八講を修す。朱雀帝が譲位し、源氏は内大臣になるが摂政は到仕の大臣(前の左大臣)に譲る。明石の君に姫君が誕生し、源氏が紫の上にその話をするが、紫の上の憂い心は晴れない。

第73回 「明石」より その4

源氏は春宮の後見役でもあり赦される。当初は多くはなかった源氏の、明石の君との逢瀬が重なる。懐妊した明石の君と後朝を交わし、「ねびととの」った紫の上の迎える都へ戻る。

第72回 「明石」より その3

都でも「もののさとし」が多く朱雀の帝は御目を患う。入道は娘に逢うよう取り計らい、源氏は逢う。ほのかな気配が六条の御息所と似ており魅かれる。紫の上と源氏は絵を描いた文等交わしたりする。

第71回 「明石」より その2

住吉の神に源氏と娘の結縁を祈願している入道の住まいから少し離れた邸宅で、源氏は、入道と昔の事など語り、娘の琴の音を耳にする。紫の上と源氏は互いに辛い思いをしている。「いろごのみ」の話。

第70回 「明石」より その1

御歌の流れと折口信夫曰くの感染教育について。都も須磨も激しい天候が治まらず、紫の上から身を賤しくやつした遣いが来る。桐壺の帝が夢枕に顕ち、即刻舟出をして住吉の神の導きに従うようにと告げる。

第69回 特別講義 大祓と日本人の原罪意識

水無月の大祓の祝詞を折口信夫の訳にも触れて講義。「光源氏の心の中にも、藤壺の心の中にも、大祓の祝詞の中に「天つ罪」「国つ罪」というふうにしてつばらかに述べている罪の条々、箇条箇条が、具体的に自分の身を照らすものとしてあったに違いない」。

第68回 「須磨」より その5

頭の中将(今は宰相)が訪れる。夜通し漢詩を作り別れに源氏が黒駒を、中将は笛を取り交わす。弥生の朔日に祓へをしていると雷雨激しく、源氏の夢の中に海龍王らしき影が訪れる。「河童祭」の事、日々の雑感を。

第67回 「須磨」より その4

源氏は琴を奏し絵を描いたりしている。太宰の大弐が須磨に寄り、五節の君と歌を交わす。都では帝も春宮も源氏を恋しく思っている。折口信夫が学内で文楽公演するにあたり「祭り」とする為、祝詞を作った逸話等。

第66回 「須磨」より その3

源氏は須磨で在原行平の居た辺りに住む。長雨の頃になり、都にいる人を思い筆をとる。紫の上は落胆し臥せている。内侍(朧月夜)は帝に許され参内するが源氏を思っている。それを帝は怨む。

第65回 「須磨」より その2

寝ずに自分を待っていた紫の上を、心からなぐさめる。源氏は花散里にも別れを言い、文の箱と琴一つを持ち、一切のことを紫の上に託し、朧月夜にも文を遣り、亡き桐壺の北山へ参詣し入道の宮(藤壺)にも別れを告げる。

第64回 「花散里」~「須磨」その1

花散里という桐壺帝の女御の麗景殿の妹君が京の一番東の中川の方に居り、逢いに行く。心温まる再会だった。後半は須磨の巻。源氏は右大臣には知らせずに、都を離れ須磨へ行く事にする。

第63回 「賢木」より その6

藤壺が出家し、左大臣は辞任する。源氏は韻塞ぎの遊びをするにつけても文学の才能も優れている。朧月夜が瘧病で右大臣家で治療をし、快癒するが、源氏が毎夜訪れ、それを右大臣が見つけ弘徽殿女御が怒る。

第62回 「賢木」より その5

藤壺が法華八講を修し、俄かに出家する。その後、二条に戻っても春宮を思い源氏は苦しむ。そして、改めて出家した藤壺を尋ね源氏は落涙し、その様に藤壺の周りのものもいたわしく思う。

第61回 「賢木」より その4

藤壺は思い悩み出家を考えるが春宮の為に押し殺す。源氏は雲林院へ籠る。紫の上と文を交わすが、理想的な女性になっている。朝顔ともやりとりをする。二条へ戻り藤壺へ紅葉に添え文を送る。

第60回 「賢木」より その3

桐壷院が崩御し朝顔の宮が斎院となる。朧月夜は内侍になる。そして源氏は藤壺ともまた、逢う。この部分の文章の読みようを中央公論社から出ている大野晋と丸谷才一の本など紹介しつつ進める。

第59回 「賢木」より その2

源氏は御息所と伊勢に下る間際まで文のやりとりをするが、甲斐もなく、斎宮が帝から別れの御櫛をいただく儀式をし、母の御息所と伊勢へと発つ。桐壷院が重い病にかかり、崩御する。

第58回 「葵」その6~「賢木」その1

二条に戻って源氏は紫の上と新手枕を交し合う。弘徽殿の女御は右大臣が朧月夜を源氏にどうか、という考えに反対する。正月に源氏は左大臣邸を訪問する。賢木の巻では伊勢へ下る御息所を源氏が訪れる。

第57回 「葵」より その5

中将も源氏の悲しむ様子を見ている。朝顔の宮からも御文が来るにつけ、理想的な人柄で若紫もかくあれと源氏は思う。葵の上の周りの女房たちとも源氏は悲しみをわかちあい、左大臣家から院へ参内した。

第56回 「葵」より その4

御子誕生の宴が幾度もある。六条は芥子の香に染み返る自らに驚く。新しい任官の日で人が少ない時ににわかに葵の上は亡くなる。源氏は悲しみにくれ、喪に服し、六条も弔問する。

第55回 「葵」より その3

葵の上が物の怪に取り憑かれ、御息所も病になる。源氏は見舞い、心から無沙汰を詫び赦しを乞うが、源氏が葵の上を看病していると、物の怪は六条の声で歌を歌い、源氏はあさましとは世の常なりと嘆く。

第54回 「葵」より その2

斎院の禊の日、源氏も供をする。葵の上の車が六条御息所の車と争い、傷つけてしまう。後半に折口信夫や斎藤茂吉、万葉集の話など。賀茂祭の日源氏は若紫と見物に出かける。

第53回 「花宴」その2~「葵」その1

源氏は若紫に御琴や御物語を教える。大臣邸で藤の花の宴があり源氏は大君姿で出かける。後半は葵に。桐壷帝が退き、朱雀帝が即位。六条御息所の姫君が伊勢の斎宮に立つ。

第50回 「紅葉賀」より その2

藤壺の御子出産が一カ月あまり遅れており、加持祈祷などする。やがて産まれた御子は源氏にとても似ている。二条で、源氏が愛らしい若紫とほほえましいやりとりをする。帝は葵の上のこともあり、戒める。

第49回 「紅葉賀」より その1

伊勢の遷宮の話から紅葉賀へ。朱雀院の行幸の試楽で源氏は青海波を舞う。詠などは仏の御迦陵頻伽の声のようだった。舞の見事さに正三位の位を贈られる。葵の上とは疎遠に、若紫とはうちとけてゆく。

第48回 「末摘花」より その4

中沢新一『僕のおじさん』の話や折口信夫の「葛の花踏みしだかれて」に触れ、講義に。源氏は雪の朝のあと、歌のやりとしをしても気が重かったが、正月にまた末摘花を訪ねる。二条で源氏は若紫と絵を描く。

第47回 「末摘花」より その3

後朝の歌を送るのも夕方になってしまう。末摘花は「中さだの筋にて」歌を返す。源氏は試楽に忙しく時が経つ。雪の夜に末摘花のもとで一夜を過ごし翌朝、雪の明るさに晒された末摘花の姿を見る。

第46回 「末摘花」より その2

源氏と中将とは笛を吹き合わせて大殿へ参る。源氏は中将と競って末摘花に逢おうとし、とげてしまう。しかし末摘花は源氏に対して、とても物おじしており、源氏は気がのらない。

第45回 「末摘花」より その1

冒頭に民族のこころの有様やなにかを虐げざるをえぬ人間の生き方を問う学問としての国学にふれる。大輔の命婦が源氏と親王との間を取り次ぐ。末摘花の七弦の琴の琴の音を聞いていた後、頭の中将に見つかってしまう。

第44回 「若紫」より その11

二条に移り若紫も戸惑うが源氏は「女はやはらかなむよき」と説く。紫の縁の歌の手習いなどをさせる。講義の後半に三矢先生と折口先生のお祭りの話、神様にささげる詞としての祝詞や長歌の話等。

第43回 「若紫」より その10

その後3日通う通例と異なるので女房は困惑し更に源氏が二条へ若紫を連れ出してしまう。「もどき生ひなむ」の「もどく」という言葉の解釈を折口信夫の説から「祭り」の持つエネルギーの事などの話。

第42回 「若紫」より その9

尼上は亡くなる。源氏の対応に、人間としての美質の描かれようを、武士としての頼朝の歌、また、(『平家物語』など)武士の合戦を描く物語を引き合いに解釈する。源氏は若紫の御帳に入ってしまい、女房達が困惑する。

第41回 「若紫」より その8

源氏はおどろおどろしい夢を見てしまう。夢占は罪と慎み、のようなことを夢から見る。他方北山の尼上が帰京しており、見舞うと、若紫が「ほだし」になる事が苦しいと、若紫を託される。

第40回 「若紫」より その7

藤壺と源氏が密かに逢う。藤壺は懐妊する。ここで、『源氏物語』を読み取る重要点を挙げる。『伊勢物語』や『大和物語』も引用する。

第39回 「若紫」より その6

折口信夫と源氏物語講義のことに触れてから、本文。葵の上としっくりいかず悩む源氏は若紫の成長にこころ惹かれていく。『光る源氏の物語』『日本語で一番大事なもの』大野晋・丸谷才一著等の紹介。

第38回 「若紫」より その5

古事記、古代の3つの叙事詩、あまがたりうた、『出雲風土記』の国引きの段、延喜式の大祓えの祝詞についてや「いろごのみ」の観点における『源氏物語』の読み解きについて。源氏は桐壷帝に拝謁する。

第37回 「若紫」より その4

『新潮』の折口信夫特集(2003年10月特大号)について等に触れてから本文。源氏は北山から戻っても尼上と歌のやりとりをする。花見の折、苔むした石の庭で楽に興じる。源氏も僧にすすめられ琴を奏す。音は耳にした者達の心をうつ。

第36回 「若紫」より その3

尼上に若紫の後見人になることを、申し出るが、断られる。僧都、聖らに見送られ、帰路につく。丸谷才一の『輝く日の宮』、晶子、谷崎の訳について、現代の短歌についてなど。

第35回 「若紫」より その2

そんな春の日尼上と、十歳ぐらいの藤壺にどことなく似ている女の子をかいまみ、境遇を知り、傍で行く末を見守りたいと思う。折口信夫の「魂の感染教育」歌に込める魂、家持の歌について。

第34回 「若紫」より その1

『伊勢物語』にふれ講義へ。瘧病を治癒する為、北山の聖のもとで加持する源氏。春の霞の日の遠望を愛で、播磨の明石の浦の入道とその娘の噂話などを耳にし「たゞならずおぼし」たりする。

第33回 「夕顔」より その11

空蝉は伊予に下る。弔い願文を作る源氏は夕顔の遺児を想う。源氏の秋の暮れの胸の内。『伊勢物語』、歌と物語、『山家集』を始めフィクショナルな恋の歌の魂への作用の話。

第32回 「夕顔」より その10

冒頭シンポジウム「『源氏物語』と根生いの心~世界に響くやまとことばの世界~」の予告。右近から、頭中将と、物おじしやすく、相手に気を遣い気持ちを隠してしまった夕顔のことを聞く。折しも空蝉から文が。

第31回 「夕顔」より その9

『死者の書』の話に触れ講義。今一度夕顔の亡骸を見たいと惟光と訪れる。帰路の加茂川の堤のあたりでは落馬さえする。源氏の「もろむき心」女性の「ひたむき心」、現代になぜ古典を読むか問う。

第30回 「夕顔」より その8

二条に戻り御帳に臥せる源氏。夕顔を惟光に託してしまい胸せきあぐる思いでいる。行方を捜しており訪れた頭中将は、源氏が取り繕った理由に、心をよぎるものがある。喪に服する源氏、惟光、右近は泣く。

第29回 「夕顔」より その7

紫式部の歌や宣長の「まくらの山」三百首の歌への評価、歌と俳句の溝のこと、さらに、中東バグダッドへの思いを語る。夕顔の亡骸を前に源氏は激しい悲しみの感情を顕わにする。

第28回 「夕顔」より その6

なに心もなきさしむかひを、あはれとおぼす宵の口、いとをかしげなる女が枕上に立ち、燈も消え入る。「まろあれば、さやうのものにはおどされじ」と魔除けなどするが、その、夕顔が息絶えてしまう。

第27回 「夕顔」より その5

中秋の名月に誘われてあくがるる心のまま、夜の明けぬうちに、源氏は夕顔を河原の院へ連れ出す。道すがら夕顔は心細く思う。河原の院に居ても、まだ、互いに身分も明かさぬままにいる。

第26回 「夕顔」より その4

言葉の持つ根源的な情熱についての話、ポーランドから来た女生徒にまつわる話等のあと、講義。源氏は姿をやつしか弱くも可憐な夕顔のもとへ通う。市井の喧騒と生活感のある場に居る二人。

第25回 「夕顔」より その3

空蝉のことを耳にし動揺するも季節は「心づくしの秋」になる。葵の上を訪ねるのも途絶えがちに。六条から帰る源氏は、夕顔のことが「常夏」ではないかと思いあたる。惟光も算段し橋渡しをする。

第24回 「夕顔」より その2

『源氏物語図典』小学館刊の紹介のあと講義。『伊勢物語』中の親子の歌を引用し乳母とのやりとり。六条から早朝帰る折り、源氏は、夕顔と添えられた扇が気にかかり、惟光にその家のことを探らせる。

第23回 「夕顔」より その1

池田弥三郎の話などに触れてから、夕顔の巻。六条のあたりを御忍び歩きし乳母の見舞いの途中、蔓に白い花の開いているのを見やる。乳母には「命ながくて、なほ位たかくなど見なし給へ」と語る。

第22回 「空蝉」より その2

軒端荻を空蝉と勘違いをし逢うが、やはり源氏は空蝉の、気性のはっきりしたわきまえのある様に惹かれている。若い小君は源氏と空蝉の間で戸惑う。この巻は伊勢の御の歌で締めくくられている。

第21回 「空蝉」より その1

空蝉の弟の小君を遣いに、思いをあきらめられぬ源氏が、空蝉に逢いに行く。空蝉とその継娘の軒端荻が碁をうつ場面を垣間見ており二人の描写が綴られている。

第20回 「帚木」より その11

小君に消息をたのむ源氏。小君と源氏の心のありようは濃やかに描かれている。再び逢おうとするも、帚木の歌に譬え、空蝉は慎み深い態度をとる。余談にスポーツと和歌の関わりの話など。

第19回 「帚木」より その10

廃仏毀釈などのことに触れ、講義へ。空蝉は中流階級の典型的な女性で、光源氏との出会いを覚悟し、心を定めて接する。ほどなく鶏も鳴き、後朝の別れとなる。

第18回 「帚木」より その9

源氏は方違えに出かけた邸宅の風情や、さかなを用意したりする様子を興味深く思う。雨夜の品定めの余韻も胸に秘め、邸宅の主の伊予介の後添い、空蝉の様子に心惹かれてしまう。

第17回 「帚木」より その8

烏滸(おこ)なる物語のことなどに触れ、左馬頭の女性論が締めくくられ、源氏の内面の描写が少しあり、雨夜の品定めの話は終わる。源氏は、方違えで出かけます。

第16回 「帚木」より その7

斎藤史逝去の話を皮切りに、折口信夫が昭和11年に書いた評論や歌に言及。講義は頭の中将の、はかない女性(後の夕顔)とのやりとり、続き、藤式部の丞が語る場面で、物語と歌、和泉式部の歌のことなどにもふれる。

第15回 「帚木」より その6

左馬頭が、頼りにする女を語るために、まず信頼ができない女性のことを語る。後半は、恋の歌で綴られている『源氏物語』と、『古事記』における男女の恋の持つ力に言及する。

第14回 「帚木」より その5

左馬頭の、やきもちやきの女との話について。その女のことを、見方を変えれば、細々とした、世話の出来た、織姫に譬え、頭の中将が願わくば両者が仲睦まじかった七夕の夫婦愛にあやかればよかったとまとめる。

第13回 「帚木」より その4

故安東次男と連句、櫻の古歌と「敷島の大和心」に触れ、左馬頭が中流階級のこころのありようなどを、大和絵論や書論を交え理想の愛情論を繰り広げる場面へ。

第12回 「帚木」より その3

宣長忌、民俗学、国学や、大祓の祝詞と「罪」について触れたあと、講義。左馬頭が理想の家刀自像について語り、世を捨てる女の哀れさ等を語る場面で終わる。

第11回 「帚木」より その2

源氏と頭の中将が理想の女性像について語り始める。左馬頭、藤式部の丞が加わり、各階級の女性の品格や、祭りと直会における女性の美しさ等に言及する。

第10回 「帚木」より その1

折口信夫、丸谷才一、大野晋の帚木書出しの文章に対する解釈に触れ、講義へ。中将の位であり、桐壷に控えていた源氏は、葵の上のもとをあまり訪れない。長雨忌みの折り、うちとけられる頭の中将に御厨子のなかの文を見せてほしいと言われる。

第9回 「桐壺」より その8

前回の復習をし「元服」について触れ、先に進む。元服した源氏は美しさを増し、帝の信任の厚い左大臣の姫君と婚姻を結ぶ。左大臣の御子、蔵人の中将は右大臣の四の姫君と結婚する。源氏のことを「光る君」というのは、高麗人が付けたと言われている。

第8回 「桐壺」より その7

机上の椿の花を見て、彼岸花の話題になる。母に似ているという藤壺に源氏はなつかしさを感じる。そんな二人を弘徽殿の女御は不愉快に感じる。源氏は十二で元服する。

第7回 「桐壺」より その6

高麗人に御子の相を見てもらう。若宮に源の氏を賜い臣籍に降下させる。亡き御息所(桐壺)に姿が似ている先帝女四宮が入内し、藤壺という場所を与えられる。

第6回 「桐壺」より その5

実践女子大学の学祖下田歌子の話から、『源氏物語』の本文に。帝は更衣の死を悲しんでいる。やがて月日が経ち、若宮が参内するようになる。

第5回  『源氏物語』を読むことの難しさ

平成13年は本居宣長の没後二百年の年。9月の秋期講義の始めにあたり、現代において『源氏物語』を読むことの難しさ、日本人の幸福感の原型について講義する。

第4回 「桐壺」より その4

弔問に訪れたゆげひの女房と更衣の母君の会話の場面。戻った女房に帝は更衣の里の様子を細々と聞く。

第3回 「桐壺」より その3

和歌の訳についての話をし、「桐壺の巻」の中で一つの山場の場面である本文に。亡き更衣の葬送が行われ、帝やゆげひの命婦が弔問に訪れる。

第2回 「桐壺」より その2

折口信夫の「源氏全講会」の予習について語ってから本文に。三歳になった皇子は袴着の儀式を営むが、母である桐壺は病気で退出され、亡くなる。

第1回 「桐壺」より その1

「源氏全講会」の歴史を解説してから、「いづれのおほん時にか、」で始まる、『源氏物語』の本文に。最初の回は皇子の誕生で終わる。

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